シーホーク騒乱 7
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芳は【ゲイル・ブロウ】を即興改変した高出力かつ持続時間延長のオリジナル魔術をもちいてジェット噴射し、強引に空中飛行(の真似ごと)をして陸地に近づこうとしていた。
(アイアンマンや、アトムは、よく、こんな、方法で、空を、飛んで、るなっ!)
人の身体は空を飛ぶのに適していない。
並の魔術師ならば秋芳と同様の方法で空を飛ぼうとしても、
三半規管がついていかず、途中で魔術を使える状態を維持できなくなるか気を失い墜落することだろう。
そもそもマナの消費量がけた違いだ、このような無謀な方法で空を飛ぼうなどという考えに重い至る魔術師などいない。
持ち前の魔力容量にくわえて、秋芳には軽功の心得がある。
跳躍の力と落下の力が釣り合う最頂点では上下にかかる力がゼロになり、一瞬だが完全に静止した浮遊状態になる。その一瞬に身体を大きくしねらせ、反動力を生じることで二段跳躍をする軽功絶技。その名も『翻鯉転龍』。
この体術を、中国武術発祥の軽業スキルを習得していたからこそできた芸当だ。
大気の腕、重力の枷をごまかし、くぐり抜け、船の帆をクッションにして着地。
なんとか地上に帰ることができた。
「アキヨシっ!」
「ラムを飲み干せ、YOHO」
「は?」
「いやなに、こういう船に乗ると言いたくなるんだよ」
「こ、このお馬鹿! なんて無茶な真似をなさるんですの。お馬鹿、お馬鹿、お馬鹿!」
「お馬鹿様」
「は?」
「その科白、二〇〇年生きた月の兎の末裔の女の子みたいに言って」
「存じませんわ、そんな方!」
軽口を交わして船から下りる。
「あのカルサコフとかいう狼藉者はどうなりましたの?」
「沖に流されたか深海に沈んだが、あのゴーレムに水中でも活動できる機能が備わっていないことを祈ろう」
その時、盛大な水しぶきが上がり、海面を割って魔鋼鉄のゴーレムが姿を現した。
「……んもー、しつこい」
「未練がましい殿方は嫌いですわ!」
シーホークを襲った災禍は、いま少し続きそうだった。
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