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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
シーホーク騒乱 7
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ルイーツァリの鉄腕の間合いに入る。

「……敗北主義者どもとちがい最後まで立ち向かったのは評価しよう。だが、これはなんだ? なんの意味があってこのような真似を――」

 みしみしみし――ミシミシミシミシィィィッッッ!!

 壁が、堤防が決壊し、大量の海水が流れ込む。

「――――ッ!?」

 いかな鋼鉄の巨人もこの海嘯のごとき圧倒的な水量、水圧にはひとたまりもない。
 叫び声を上げるいとまもなくカルサコフは瀑布に押し流され、荒れ狂う濁流の中に没した。



「火がダメなら水。もし火計をしくじったら旧磯地区に近づくな」

 秋芳の考えを察したウェンディはその言葉にしたがって人々に呼びかけ、自身もまた安全と思われる高所に移動していた。
 その眼下、旧磯地区があったあたりにみるみる水が満ちる光景は圧倒的だ。

「まさか本当に壊すだなんて……」

 シーホークの一角にある旧磯地区。このマイナス海抜になっている場所は堤防の老朽化で多数の漏水が発見されており、改修できる状態ではないため破壊する予定だったのだが、思わぬ事態で予定が繰り上がってしまった。

「まだ見つかりませんの?」
「いま水中でも活動可能な魔術師たちを集めています。ただいま少しお時間が……」
「そう……」

 リビングアーマーらを掃討し、負傷者への対応を済ませた警護官たちがカルサコフと戦闘中行方不明になった秋芳を探索中だ。
 もとより旧磯地区一帯に人は住んでいない。堤防決壊による一般人への被害がないのは不幸中の幸いだが、ひとりで襲撃者の首魁を撃退した街の英雄を探し出そうと警護官たちも必死なのはウェンディにも伝わってくる。

(いっそのことわたくし自身が彼を探しに……。水中でも活動できる魔術が、【エア・スクリーン】なら使えますわ)

 黒魔【エア・スクリーン】。強固な空気障壁を膜のように張る。物理的な衝撃には弱いが、三属エネルギーを防ぐ対抗呪文の基礎だ。対象指定呪文なので足が止まらないのが利点で、圧縮空気の膜を球体上に形成しての潜水活動などにも多用される。

(あら?)

 ウェンディの視界の隅。空の
一点に見なれないものが浮いている。
 あちらに飛んだかと思うとこちらに急旋回、妙な角度ででたらめに飛行するその姿は鳥でも風船でもない。
 そんな未確認飛行物体をよく目を凝らして見れば。
 人だ。
 人が空を飛んでいる

「アキヨシ!?」

 秋芳と思われる飛行物体はウェンディのいる港に近づくと、近くに泊めてあった船の帆にむかって斜め気味に落下した。



(乗矯術が、呪術が、使えない、てのは、つくづく、不便だ、なっ!)

 乗矯術というのは道教に伝わる空中浮遊、飛行の術だ。
 もとの世界の呪術が使えない秋
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