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東京レイヴンズ 今昔夜話
エイリアンVS陰陽師 宇宙人がなんぼのもんじゃい! 2
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湿地や干潟が広がっていたんですよ」
「ほー」
「縄文海進とか、学校で習いませんでしたか? 春虎は普通の高校に通ってましたよね」
「……記憶にない」
「えー、絶対に地理で習っているはずですよ」
「だとしても忘れちまってるよ。ジョーモンカイシンとか、小難しいコトバ。こういうふうにイラストや写真つきで教えてくれれば覚えたのに」
「たしかに、絵があるとインパクトありますよね。――あ、春虎これ見て、これ!」
 
『かつて深い森と広い沼が存在していたこの土地には川姫と呼ばれる川などの水辺に現れる、河童の仲間のような女の妖怪の伝説がある。ある日、人間の男に恋をした川姫は美しい村娘に化けて男の嫁になり、三人の子どもが生まれた。しかし川姫は里にいる家族や友人たちとの暮らしが忘れ切れず、長女が一〇歳になった日に沼の底に帰っていった。川姫の里の長は娘の行為に激しく怒り、地上の世界にもどることを禁じた。それ以来、村に川姫たちは姿を見せなくなった。雨の日に沼の縁に立つと、沼の底から子ども恋しさに泣く川姫の子守唄が聞こえてくるという――』

「なんだか、日本むかし話みたいな話だな」
「ええ、せつないですよね……」
「おれだったら里にまで乗り込んで、嫁さん取り戻すぜ」
「頼もしいです、春虎!」
「でもこういうのって、ええと、隠れ里。とか言うんだよな」
「そうです、たんに広範囲にわたって結界が張られている場所ならまだいいんですけど、フェーズ5相当の霊的災害に酷似した空間でしたら探知も侵入も極めて困難でしょうね」

 フェーズ4まで進行した霊災がさらにその進行を深めた場合。霊災の連鎖が極限に達した、さらのその後。霊災の根本である霊気の偏向が、もはや偏り≠ナはなくなると、局地的、局部的にその歪んだ均衡がもはや歪みではなくなり、それが正しい姿となり、ついには世界に受け入れられるようになる。
 その存在が天地万物に充溢する霊気のひとつの型として在る≠謔、になる。
 進行した霊災が世界に受け入れられ遍在化する――。
 という考えで、天国や地獄。魔界や黄泉といった想像上の異界もまた、霊災が極まったさいの形の一つではないかという説がある。
 世界各地に伝わる隠れ里や桃源郷伝説などはこれで説明がつく。
 神隠しなどは『異界』という名の霊災に巻き込まれたくちだ。
 呪術によって世界の一部を一時的に異界化することは可能であり、結界に閉ざされた状態の空間もまた一種の異界といえる。

「隠れ里といえば『今昔物語』にこんな話があるね――」

 今は昔、大峰を通る僧、酒泉郷に行きたる語――。
 大峰山を歩いていた僧が道に迷い、いままで見たことのない深山幽谷を進むうちに人郷へ出た。道を訊こうと民家を探していると郷の中に水が滾々と湧き出る泉を見つける。石を敷き詰
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