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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 6
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 西を向いて振り下ろされた長剣が白い閃光を奔らせる。

「兵を発起す、兵を発起す! 北方百狄の兵を発起す! 黒旗黒車、師に随いて来たれ。黒馬黒兵、師に随いて起れ。北岳恒山大帝これを命ず。火急に王命の如くせよ!」

 北を向いて振り下ろされた長剣が黒い閃光を奔らせる。

「兵を発起す、兵を発起す! 東方百夷の兵を発起す! 青旗青車、師に随いて来たれ。青馬青兵、師に随いて起れ。東岳泰山大帝これを命ず。火急に王命の如くせよ!」

 青い閃光が奔る。
 居並ぶ兵士たちの身に変化が起きた。
 心の奥底から闘志が、熱い闘志が込み上げてくる。もとより戦意の高い宋兵たちだったが、さらに士気が高まり恐怖心が完全に消滅した。
 全身に力がみなぎり身体が軽く感じられる。
 いかなる敵にも負ける気がしない。それがたとえ自軍の数千数万倍の軍勢が相手でも、悪鬼羅刹のたぐいだとしても――。
 熱く静かな高揚感が場を支配した。
 四方を司る神々に必勝を祈願し、戦意高揚を目的とした儀式呪術。
 この呪術の影響下にある者は身体能力が向上し、恐怖心をなくす。
 さらに精神にはたらきかける呪術の影響を受けにくくなり、痛みへの耐性が増す。
 霊災修祓を主とした現代の呪術界ではほとんど使用されることのない、帝国式陰陽術だ。

「身体が燃えるようだ!」

 あまり感情をあらわすことのない張世傑だったが、この時ばかりは興奮した面持ちで秋芳に話しかけてきた。

「これほどまでにみなの士気が高まればこたびの作戦、成功まちがいない」
「張将軍の考えた作戦、かならずや実行させてみせます」

 起死回生の大呪術の発動まで時間がかかる。それまで元軍を食い止め、崖山に一歩も入らせてはいけない。そのための作戦をこれから開始するのだ。





全軍前進(チュアンジュンチャンジン)!」

 日が傾くと同時に元軍が動いた、崖山に迫る。

「なんだ、あやつらの布陣は?」

 周囲をかこんでいた海が大地と化した崖山は手足をもがれたカニにひとしい。崖山の奥深くに立てこもって籠城すると踏んでいた元軍の将兵たちだったが、なんと宋軍は崖山の外に出て陣を組んでいた。
 それもわずかに残った川のように広がる水場の外側に。
 全体から見ればわずかな水場だが、それでもそれなりの深さと広さがある。城を守る堀に見えないこともない。最後の最後に残った唯一の地の利だ。それなのにせっかくの天然の堀を背にして布陣しているのだ。

「あやつら、まだ崖山の中におれば高処の地の利を得られようものを、あのような低地に群れてなんとする。高処にいるわれらが騎兵で突撃すれば踏みつぶされるだけだぞ」
「しかも水を背にして布陣するとは、韓信を気どるつもりか」

 秦末漢初、漢と趙との
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