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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 6
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いいながら人助けをするほうがはるかにましでしょ。あたし好きよ」
「なるほど、そういう見方もあるのか」
おしゃべりしつつ、作業を進めている。小さな厨子の中から一体一体仏像を取り出して祭壇に置く。
水牛に乗った六面六臂六足の大威徳明王。
足もとに大自在天を踏みつけた降三世明王。
手首足首に蛇を巻きつけた軍荼利明王。
三面の中央の顔に五つの目がついた金剛夜叉明王。
右手に倶利伽羅の宝剣、左手に羂索を持った不動明王。
中央に不動明王を配し、東方に降三世明王。南方に軍荼利明王。西方に大威徳明王。北方に金剛夜叉明王――。
それらはまた木火土金水の五行にあてはまる。
ここに森羅万象をあらわす小宇宙が完成しつつあった。
「さがせばあるものだな、愛染明王の仏像もあったぞ」
赤く染められた身に六本の腕をそなえた坐像。それぞれの手には弓と矢、蓮華や法具がにぎられ、獅子の顔をかたどった冠を逆立つ怒髪の上に乗せ、見るもおそろしい憤怒の形相を見せている。
愛欲を司る明王、愛染明王の木像。身を彩る真紅は煩悩の激しさを象徴しているかのようだった。
「……使わせてもらうか」
なにかをふと思いつきた秋芳は愛染明王の仏像をそっとふところにしのばせた。
「あ、今なにをしたの、秋芳君」
「なぁに、ちょいと小田切寧々的な力を行使してみようかとね」
「はぁ? ……よくわからないけど、変な悪戯しちゃダメよ」
「わかってるって」
残りの作業を京子にまかせ、秋芳はその場を離れた。彼にもやるべきことがあるからだ。
軍装した兵士たちが集まる広間で出陣の儀式が執り行われた。
「兵を発起す!」
祭壇の前で長剣を抜き放った秋芳が声高に叫ぶ。
「兵を発起す! 天兵および地兵を発起す。陰兵および陽兵を発起す。木兵および火兵を発起す。土兵および金兵を発起す。水兵を発起す。陸海空の諸兵を発起す。四方四営の兵を発起す。中岳嵩山大帝これを命ず。火急に王命の如くせよ!」
長剣を頭上にかざし、朗々と宣告するとそれをするどく振り下ろすと黄色い閃光が奔る。
「千々の将兵、師に随いて行け! 万々の将兵、師に随いて起れ! 千将万兵、来たりて列陣せよ。火急に律令の如くせよ!」
南に向きを変えてふたたび宣告する。
「兵を発起す、兵を発起す! 南方百蛮の兵を発起す! 紅旗紅車、師に随いて来たれ。紅馬紅兵、師に随いて起れ。南岳衡山大帝これを命ず。火急に王命の如くせよ!」
振り下ろされた長剣が赤い閃光を奔らせる。
「兵を発起す、兵を発起す! 西方百戎の兵を発起す! 白旗白車、師に随いて来たれ。白馬白兵、師に随いて来たれ。西方崋山大帝これを命ず。火急に王命の如くせよ!」
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