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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 6
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いとね」
「だな」
「特大級の儀式呪術、ぶっ放しちゃいましょ!」
「ああ」

 紅葉映える錦秋の京都への研修旅行。
 その旅路の途中で秋芳は自身の出生について、京子は想い人が人ならざる存在だと知ることとなるのだが、それについて語るのはもう少しあとのお話――。





 秋芳たちの準備がととのえるよりも前にそれは起きた。
 最初にそれに気付いたのは海中から辺りを探る秋芳の使役するタイプ・ギルマン、続いて哨戒用の走舸(そうか)に乗った宋軍の斥候兵たちだった。
 水平線を埋め尽くす船、船、船――。
 船上に井楼(せいろう)と呼ばれる櫓の造られた楼船(ろうせん)が海上を埋め尽くす様はあたかも海上に山々が隆起して出現したかのようだ。
 楼船。
 船の縁に板を立て並べて矢や投石を防ぐように作られた大型の軍船で、多層の船体で構成された、まさに水上の楼閣だ。
 長さは二〇メートル前後で艪の数は左右の舷を合わせて四〇。その起源は周の後代、戦国時代にまでさかのぼり、秦や漢の時代になると次第に大型化し、三国時代には外洋へ出るための大型海洋船にまでなった。呉の孫権が東南アジアに使者を使わせたときの楼船は大きな七枚の帆を張り、五〇〇人以上の人を乗せていたという。
 元軍の圧倒的な物量をあらためて実感した人々は戦慄を禁じえなかった。
 元軍の一斉攻撃がはじまる。楼船に積まれた横流砲と呼ばれる投石器から大小無数の石礫が投射された。大は牛ほどの、小はこぶし大の石が雨あられと降りそそぐ。一〇〇束の雷が同時に落ちたかのような轟音が響き、空をおおう石の群れに太陽は陰り、夕闇のような暗さが広がる。
 しかし――。

「韃靼人のやつら、距離も読めないのか。ちっともとどかないぞ!」

 目測を見誤ったのか、元軍の投石は崖山の港のはるか前方に落ちるばかりで、高い位置にある居住区にとどくどころか港に泊めてある船にすらかすりもしない。
 物見に立つ宋の兵士たちは嘲笑したが、それが一刻、二刻、三刻……。日が落ちたあとにも変わらず降りそそぐ岩の暴風雨を前にしてさすがに困惑してきた。

「韃靼どもめ、いったいなにを考えているんだ……」
「海を埋め尽くすつもりか」
「まさか……」

 そのまさかであった。
 やがて数多の岩々が大海原を埋め尽くし、人工の岩礁地帯ができあがる。
 さらに――。

「「「――以土行克水行――以土行克水行――以土行克水行――」」」

 道士、僧侶、行者、巫覡、その他多くの異教の司祭たち――。
 元軍の陣営奥深くから呪術者たちの詠唱がとどろきわたり、呪力の波が押しよせてくると、海面にせり出した岩が泡立つようにうごめき、変容する。
 岩のひとつひとつが接着し、融け合い、隆起し、広大な大地と化した。
 土が水を
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