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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 6
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のがあってもいいと思うんだ」

 陰陽塾では一年の間は座学が中心となり、甲種呪術などの実技の広義ではごく基本的なことしかおこなわれない。しかし二年からは逆に甲種呪術の習得が重点的におこなわれるようになり、なかには二年と三年の共同講義もある。実技合宿というのがそれにあたり、通常の講義のない週末にクラスごとにおこなわれ、合宿先はたいてい関東近郊のパワースポット。霊山などになっている。

「京都といえば神社仏閣が立ち並び、江戸東京と同様に幾重にも結界の張り巡らされた日本屈指のパワースポット。かつては陰陽師の活躍の表舞台だったんだ。俺たちが学びに行くにふさわしい場所だろ」
「たんに自分が観光を楽しみたいだけなんでしょう。あ、でもあなたにとって観光旅行って言うよりかは里帰りに近いのかしら」
「まあ、そうなるのかな。……本音を言えば国宝級の寺院で京子とまったりと逢瀬を楽しみたいんだ」

 秋芳は一般の見物が禁じられている寺社仏閣に穏形して忍び込み、自由に観覧するのに凝った時期がある。まだ京都にいた時、夜の東山慈照寺。俗にいう銀閣寺で笑狸と邂逅し、たびたび会うようになっていたのがきっかけだ。
 人けのない夜の寺社のもつ、なんともいえない美しさに心惹かれた。
 星々に照らされた玉砂利のきらめき、障子ごしに光さすほのかな月明かり、苔むした緑色の池からただよってくる冷たい風、幽玄な趣の能舞台――。
 長い年月を経た文化財、歴史ある建造物というものは妖艶な美女のように人を惹きつけ、豊潤な美酒のごとく人を酔わせるものだ。

「西本願寺に飛雲閣という建物があってな、一説によると秀吉が建てた聚楽第の一部を移設したのではないかといわれている」
「それ、聞いたことがあるわ。金閣銀閣とならぶ京の三名閣のひとつよね」
「そう、それだ。池に面した造りで、橋がかけられる前は舟で出入りしていたそうだ。なんとも情緒があるだろう」
「敷地内に舟で出入りできる別邸を建てるだなんて、贅沢ねぇ」

 そう言う京子の倉橋家とて目白に別邸として洋館を持っている。贅沢ぶりでは負けてはいないのだが、それとこれでは話が別のようだ。

「そういう場所でひとり思い澄ましていると寂しさもわいて出てきてな、いつか気立てが良くて愛らしい少女と出逢い、恋心を育みたいとずっと夢想していた。そしていま、まさにそんな少女と出逢った。そういうところでひと晩いっしょに語り合わないか?」
「いいわよ。……ふふっ、あなたに会ってから不法侵入ばっかりね」

 旧陰陽塾の塾舎やら政治家の私邸やら、なにかとお邪魔しているふたりである。

「江山風月、本無常主、閑者便是主人。良い場所は良い人に愛でられるために在る。えんりょすることなんてないさ」
「じゃあはりきって元軍をやっつけて、もとの世界にもどらな
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