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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 6
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三年。フランスがイラク戦争への加担を拒否したことに腹を立てた一部のアメリカ人はフランス製品の不買運動などの反仏活動をおこない、その一環としてフレンチフライドポテトやフレンチトーストをフリーダムポテト。自由のフライや自由のトーストと言い換えたことがあった。
 第一次世界大戦の時にも反ドイツ運動として言い換えが行われ、ザワークラウトが自由を意味するリバティを用いて「liberty cabbage」、ダックスフントが「liberty pups」、ハンバーガーが「liberty steaks」などと呼称された。
 実に愚かしい行為だが、他所の国を笑うことはできない。日本も戦時中は敵性語禁止などとしてコントラバスを「妖怪的四弦」、〒ポストを「上方差し込み下方取り出し郵便箱」、カレーライスを「辛味入り汁かけ飯」などと、噴飯ものの言い換えをおこなっている。
 こんな精神的に余裕のない国は戦争に負けてとうぜんだろう。
 ほかにも雪山駝掌(ラクダの足肉の卵白かけ)や炸鹿蹄筋(シカのアキレス腱)、胡芦鶏(鶏の丸ごと蒸し揚げ)、手?肉(羊肉の塩茹で)、?酪意粉(チーズパスタ)といった料理の数々を賞味する。食べ物の好ききらいのない京子も、さすがに蛇は抵抗があるのか一龍蛇珠(蛇とホタテの蒸し物)だけは秋芳の胃袋におさまった。

「まさに龍肝豹胎。珍味とはこのことだな」
「中国料理って芸術品よねぇ。こんな美味しい物が食べられるんだったら、あと三年くらい目が覚めなくてもいいかも」

 食後のデザートに氷糖胡芦(ビンタンフール)、サンザシやイチゴなどの果物を砂糖で包んだお菓子を口にふくんだ京子が相好をくずす。

「そうか? 俺はそろそろ日本食が恋しくなったぞ。鰹だしの効いたそばつゆにたっぷりの海苔を入れた花巻そばや、油揚げと大根の味噌汁に壬生菜や柴漬けで白米が食べたいな。あと日本の家屋や庭園もな」
「枯山水の砂庭に池泉回遊式庭園。秋芳君てほんとああいうの好きよねぇ、まぁ、あたしも日本人だし、きらいじゃないけど」
「日本庭園の様式は中国に源流があるが、朱金で塗りたくった中華式の装飾は派手派手しくてどうもおちつかないからな。……日本は資源がないなんて言われるが、ダイヤモンドだの金だの石油なんかより山紫水明のほうが遥かにありがたいよ。金も石油もなければ他所から買ってくることができるが、山河や水源はそうはいかない。豊富で清潔な水流と自然を必要以上に破壊しない伝統的な林業があったからこそ、いまの日本の文化がある」
「畳の匂いも気持ち良いものね」
「そこで思ったんだが、京都に研修旅行に行けないか塾長に提案しようかと考えているんだよ」
「あら、良いわね。京都だなんてまるで普通の修学旅行みたい」
「だろ? 一応陰陽塾にも合宿があるみたいだが、二年からだし。一年にもそういう
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