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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 6
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いが充満する。

突撃(トゥジー)! 突撃(トゥジー)! 突―(トゥージー)!」

 馬蹄の轟きと絶叫に秋芳がふり返ると、馬に乗った元兵が刀を振りまわしながら突進してくる。

「禁足則不能歩、疾く!」

 足を禁ずれば、すなわち歩くことあたわず。
 疾駆する馬の四肢は金縛りにあったかのように動かなくなった。
 全力で駆けてきていきなり足の動きを封じられたのだ。人を乗せたまま馬がたおれ、地響きをあげた。
 転がり落ちた元兵の首はありえない方向にまがっている。
 元王朝。モンゴル帝国の強さは戦術面ではなく戦略面にある。チンギス・ハーンの時代から純モンゴル系の遊牧民はほとんど実戦に参加しなくなり、前線に駆り出されたのは征服された諸国の民族たちからだ。
 たったいま命を落としたこの兵士も、元軍に征服され無理矢理徴兵されてきた人なのかもしれない。
 そんなことをぼんやりと考えていたら濃い土煙に吹かれ、鼻を殴られたかのような、つんとした痛みを感じた。
 音もなく熱いなにかが体外へ流れ出した。鼻の下、口のまわりが血に染まっている。
 空気中にふくまれる粗い土砂に鼻の粘膜がやぶれ、鼻血が噴き出したのだ。

「ああ、これが、これが戦場なのか……」

 痛みと鼻血の金臭さのおかげでぼうっとしていた頭が冴えてきた。
 自分はいま無意識のうち呪を唱え、襲いかかってきた敵兵の命を奪ったのだ。
 これまでにもなんどか命のやり取りをしてきたことがある。霊災を相手にしたことのほうが多いが、それでも人間。生身の人間相手に呪術戦となり、相手を死に至らしめたこともあった。
 だがそれはあくまで個人的な戦い。戦闘であって戦争ではない。
 秋芳はいま、生まれてはじめて戦場に立ったという自覚を感じた。

「土御門夜光は、こんな場所に立っていたのか。俺は夜光が目にしたような光景を見ているのか……」

 怒号と絶叫、雄叫び、悲鳴。そして噴煙とおびただしい流血。それでいて妙に透き通って見える景色。残酷で醜く、それでいて澄んだような世界に。
 きーん、というような高い音がずっと聞こえ、その音が絶えた時に死ぬような気がした。
 夜光自身が戦地におもむいたという公式記録は存在しない。だが、彼が前線に立ち三発目の原子爆弾の投下を阻止したとか、占守島の戦いで侵略してきたソ連軍を撃退したという類の伝説は枚挙にいとまがない。
 閃光と轟音。
 爆風にあおられて転倒しそうになった秋芳の全身に鉄片と小石の雨が叩きこまれる。
 見れば前方に大穴が穿たれていた。

「いてて、ひょっとして今のが『てつはう』ってやつか? 今さらながらリアル元寇だな」

 この手の流れ弾≠ノ対するそなえはきちんとしてある。結界護身法による防御力の強化、禁矢刃の掌決、それ以
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