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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 6
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団が速度を落としたため後続の兵は進めず、なかば停止してしまう。その後背はまったくの無防備状態だ。
 まさにその時、宋軍の前に設けられていた柵がほとんど一瞬で消え失せた。宋軍の兵士が刀をふるって柵をささえていた綱を切断すると、柵はたちまち倒れて宋軍の前はがら空きにある。堅牢な馬防柵と見せかけて、その実は縄一本でささえられた、ただの棒や板の集まりだったのだ。

乗馬(シォンマー)!」

 張世傑の命令一下、宋兵たちは喚声をあげて馬に乗り、敵勢に向かった。
 張世傑もまたみずからの愛馬に乗り先陣を切る。

「突撃! 皆殺しにしろ!」

 宋兵は一丸となって動きを封じられた元軍の背後から襲いかかる。
 密集していた元軍はひとたまりもない。投げ槍を背に受け、斬撃を首筋に受け、刺突をわき腹にくらい、おどろくほどのもろさでくずれ落ちる。

「なにをしている、走れ! 走れっ!」

 その惨状を見て羅延があわてて歩兵部隊を投入するも、かなりの距離を走破しなくてはならない。ごくゆるやかな緩急といえども甲冑を着たまま走るのだ。それも身を隠すこともできない傾斜面を。一歩ごとに矢をあびて、一呼吸に十人単位で地に倒れていく。
 息も絶え絶えに主戦場にたどりついた時には歩兵隊は千人以上の人員を失っていた。
 そこにまったく疲弊していない宋兵たちが待ち構えている。

「遅いぞ、鈍足の韃靼人め!」

 愛刀一閃。張世傑の長剣が一度に二人の元兵を斬り伏せる。
 張世傑以下、秋芳の儀式呪術によって士気高揚した宋兵たちが全身に返り血をあびながら突進し、殺戮の限りを尽くす。
 槍を敵の身体に深々と突き刺し、抜くのが困難と判断すると、その槍を捨て腰に帯びた刀剣を抜き放って切り込んでいく。
 白刃が激突して火花を飛散させ、血が沸騰し、甲冑は割れ、鮮血の砂塵の中に黒い人馬の影が乱舞する。
 元の兵士らは善戦したが、死傷者の数は増えるばかりだ。神がかったかのような宋兵の猛襲の前に一歩退き、十歩退き、ついにはくずれ落ち、潰走をはじめた。

「逃がすか!」

 張世傑をはじめ宋の兵たちは撃剣を振るい、血煙をあげ続ける。
 もう何人斬り伏せたことか、血糊と脂とで切れ味が鈍っていたところ、甲冑にまともにあたり刀身が折れ飛んだ。
 張世傑は舌打ちすると折れた剣を元の兵に投げつけ、落ちていた敵の剣を拾ってさらに突進を続ける。
 宋軍は鬼神の群れであった。
 戦場にあった元軍の過半は屍と化し、生き残った者たちも追いつめられていた。

「逃げろ、逃げろ!」
「退路があるぞ、こっちだ!」

 だれかが叫ぶ。
 追いつめられた元軍の兵たちの血走った目がひとつの方向を見る。
 宋兵たちの槍の列、人馬の群れが、そこだけは途切れているように見えたのだ。
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