暁 〜小説投稿サイト〜
東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 6
[12/16]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
前方へ突進して敵の右翼を攻撃する。――見るがいい。敵の右翼には柵もなく、兵数も少なく、しかも半分ほどは座り込んでいる傷病兵ではないか!」

 たがいの軍の様子が視認できるほどの距離まで来たが、宋軍にはなんの動きもない。
 一万に満たない兵のうち中央に騎兵五千、左翼にはおなじく騎兵三千、右翼には歩兵が千人ばかり配置されている。
 全軍が川のように広がる海を背にして騎兵は全員下馬して柵の前にかたまっている。
 羅延が侮るのも無理はない、じつに歪な陣形だ。

「やつらは恐怖に震えながら、ただ殺されるのをまつだけだ。愚かにも大元国に逆らったおのれの愚かさを恨むがいい」

 羅延は戦う前から勝ったつもりでいた。
 銅鑼が鳴り響き、元軍の騎兵部隊が大きく横に広がりながら突出する。
 地を駆け、猛然と肉薄した元軍だが、直前になってはじめて正面の柵が二重になっていることに気づいた。
 二重の柵を突破するよりも緩斜面の下に無防備な姿をさらしている右翼の歩兵を蹴散らすのがたやすい。そう判断した先頭集団が馬首を左へそらすと後続の全体がそれにならう。
 柵にそって元軍は怒涛のいきおいで馬を走らせる。宋軍の眼前を左から右へ。
 つまり元軍は密集したまま右側面を敵軍にさらけ出しているのだ。
 馬上の兵は左手で手綱をとり、槍や刀剣を高々とかざす。右のわき腹ががら空きだ。
 張世傑の狙いはそこにあった。なぜ弱々しい歩兵だけの部隊を右翼に配したか。彼らはおとりだったのだ。
 元軍の動きを見た張世傑が号令を発すると下馬していた騎兵たちがいっせいに弓をかまえて柵の間から矢を放つ。
 数千の矢が真横にむかって一斉掃射されるさまは銀色の奔流のようで、その風切り音は猛禽が群がり飛び立ったかのようだ。
 至近距離であり、はずれようがない。
 悲鳴をあげて元軍の馬がたおされ、振り落とされた兵士の身体が宙を舞う。たおれた人馬につまずいて後続の馬も横転し、土煙をあげる。混乱のさなかにさらに矢が射られ人馬が殺傷されていく。

「なにをしている、そのまま進め!」

 羅延が浮足立つ兵士たちを叱咤する。

「進んで歩兵を蹴散らせ! そうすれば敵軍はくずれるぞ。その場にいては的になるだけだ」

 直進して歩兵隊を破り、中央を突破したあとに右へと回り込んで中央の軍に突入すれば
自分たちが設けた柵にはばまれて行動できず元軍の騎兵に蹂躙されることだろう。
 猛射の前に甚大な犠牲を払いつつ、さらに前進を続け先頭集団がようやく歩兵隊の列に突入しようとした、その時。
 座り込んでいた兵たちがおどろくほどの俊敏さで左右へと走り出した。
 元軍の目の前は一瞬にして無人の野となり、兵たちは狼狽する。いきなり左右に散開されてはどちらへと馬首を向ければよいかわからない。先頭集
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ