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真田十勇士
巻ノ百十三 加藤の誓いその六

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「まだ続いているといえば続いていますな」
「うむ、確かにな」
 それは加藤も認めることだった、それが終わるのはまさに大坂のことが片付いてからだと加藤も幸村もわかっている。
「それはな」
「戦国の世は裏切りが常ですが」
「貴殿はか」
「それを何とかです」
「義を護りたいか」
「そう思っていまして」
 それでというのだ。
「何とか」
「そのこともわかった」
 加藤はここまで聞いてまた頷いた、そのうえで幸村に対してあらためて言ったのだった。
「義か」
「はい、その為に生きるのが武士と思いまして」
「確かにな。しかし義を貫くことはな」
「身を為すよりもですな」
「難しいが」
「何とか貫きたいと思い」
 そしてというのだ。
「それがしはそうしたいのです」
「わかった、では貫かれよ」
 加藤は静かな声で幸村に応えた。
「そしてな」
「右大臣様を」
「頼む」
 是非にと言うのだった。
「何かあったその時はな」
「必ずや」
「そしてわしとも約をしてくれるか」
 幸村を見据えてだ、加藤は彼に言った。
「右大臣様のことを」
「必ずや」
「済まぬ。しかし貴殿ならば」
「果たしてくれるとですか」
「ここまで来ただけの者じゃ」
 それならばというのだ。
「任せられる、だから約をする」
「それがしの力を承知されたこそ」
「しかもその者達もおる」
 十勇士も観て言うのだった。
「皆ここまで誰にも見付からずに来た」
「それがしと同じく」
「それだけのことが出来た者が十一人おる」
「だからこそですか」
「右大臣様を頼みたい、よいな」
「大坂で何かあれば馳せ参じ」
「そしてですな」
「何かあればな」
 その時はというのだ。
「ここまで右大臣様をお連れしてじゃ」
「薩摩まで」
「頼む。この熊本城は島津家の備えじゃが」
 その為に築いた城だ、付け城は家康が好むことでそうして相手に常に備えられる様にしているのだ。
「しかしな」
「その島津家だからこそ」
「幕府に従うふりでな」
「実は、ですな」
「そうではない。だからな」
「右大臣様もですな」
「そうなる」 
 こう幸村に話した。
「だからじゃ」
「文を送って話をすれば」
「間違いなくじゃ」
「匿って頂けますか」
「しかも薩摩に入った忍は出られぬ」
「少しでも怪しいとなれば」
「余所者は切られる国じゃ」
 そうして国を守っているのだ、だから幕府の忍達も薩摩の方に行くのを恐れているのだ。
「それで右大臣様も薩摩ならば」
「安心して余生を過ごせる」
「そうなる、だからな」
「その時は」
「くれぐれも頼んだ」
「わかり申した」
 今度は幸村が頷いた。
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