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ラブライブ!サンシャイン!! Diva of Aqua
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僅かに開いた窓の隙間から風が入り込み、カーテンがゆらゆらと波打っている。カーテン越しに射し込んでくる柔らかな夕日が、ピアノで音を奏でる少女を優しく包み込んでいた。
放課後の音楽室、少女はグランドピアノを弾いている。音楽室には少女以外の人の姿は見当たらない。
青と水色の縞模様に赤いラインが縦に入ったスカート、紺のブレザー。その襟元には青のリボンが主張している。
そんな制服に身を包んだ少女がただ一人、音楽室にて鍵盤を叩いて音を奏でている。それは観客のいない演奏会、少女は孤独と闘っていた。少女の打鍵が徐々に粗くなっていく。孤独の寂しさを紛らわすように少女は強く、より強く鍵盤を何度も叩いた。
白と黒で構成された八十八のそれだけが、少女が持っている唯一の自己表現。彼女はピアノを弾くこと以外、何も持ち合わせていない。
正確な演奏は少女の技術の高さが伺える。もし少女の演奏を造詣が深い者が聴けば、褒め称えるだろう。
だけどここは、観客が誰一人としていない放課後の音楽室。少女は全ての鬱憤を晴らすかのように、鍵盤を強く叩き続けた。目を大きく見開きピアノを弾き続けるその姿を、演奏者とは形容しがたい。これまでの人生をピアノに捧げてきた少女は、そのピアノに苦しんでいた。
やがて、一曲の演奏が終わる。鍵盤から両手を離した少女の額には汗がびっしょりと滲み出ている。ふぅっと溜息をひとつ吐いた少女が、ポケットから取り出したハンカチで額の汗を拭った。
グランドピアノの蓋をそっと閉じると、白が消えて黒だけになった。少女はその黒をただ無言でジッと見つめていた。きゅっと固く結んだ唇は、微かに震えていた。
少女はピアノから目を逸らすように、椅子から立ち上がって後ろを向いた。閉じていたカーテンを開いていくと、鮮やかなオレンジ色が飛び込んできた。
――綺麗だな。そう思った少女の唇は、柔らかく結ばれていた。
その時、音楽室に鍵盤以外の音が響き渡った。ガラガラと音を立てたそれは、扉が開く音だった。少女はその音に驚いたものの、視線は窓の外から離さなかった。
コツコツと高らかに響く音が段々と大きくなって鮮明に聴こえてくる。その音がピタリと止まると、次いでパチパチと少女の真後ろで響く乾いた音が、少女の鼓膜を震わせた。拍手の音だと分かっていても、少女は窓の外から目を離さなかった。
そして、拍手の音が鳴り止む。
「あの――」
それは、雑念の無い綺麗な音だった。
少女は窓の外から視線を外した。
***
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