暁 〜小説投稿サイト〜
ラブライブ!サンシャイン!! Diva of Aqua
遭遇
[4/7]

[1] [9] 最後 最初 [2]次話
虫の鳴き声が聞こえてくる。まるで音楽を聴いているような感覚に、千歌はクスッと微笑んだ。大好きなスクールアイドル――μ's(ミューズ)の曲をハミングで奏でながら、気分良く歩いていく。

 それから丁度一曲歌い終えるほど歩いた千歌は、ふとその足を止めた。すると耳に手を当てて、何かを聴くことに集中する。


「歌……?」


 どこか遠くから聴こえてくる女性の歌声。


「あっちの方から聴こえる」


 止まっていた千歌の足は吸い寄せられるようにその方向へゆっくりと進んでいき、徐々にその速度を上げていく。気がつけば千歌は歌の聴こえる方へと走り出していた。

 息を切らしながらも、千歌は全力で走っていく。何故こんなにも一生懸命に走っているのか、それは千歌自身にも分からない。だけど、もし誰かにそう尋ねられたのなら、千歌は聴こえてくる歌をもっと近くで聴きたいからだと答えるだろう。

 地面を蹴るにつれて、歌声は少しずつ大きくなっていく。もうすぐ、あと少しで辿り着けると確信して、千歌はより速度を上げた。



 千歌の足が止まる。膝に手をついて呼吸を整える。その視線に映るのは、夜の砂浜。



 そこに、一人の少女が立っていた。



 その少女に向かって、千歌はゆっくりと近づいていく。暗くてよく見えなかった少女の全体像が、近づくにつれて少しずつ鮮明になっていく。



 およそ五メートルの距離まで近寄り、千歌が足を止めた。これだけ近づいてなお暗くて顔の見えない少女の歌う曲は、千歌の知らない曲だった。だけど、その透き通った綺麗な歌声に、千歌は一瞬にして魅了された。



 ギュッと握りしめた両手を胸の前にあて海に向かい、まるで祈るように歌う少女。潮風で(なび)く長い髪とワンピースという少女の恰好が、それを目の当たりにする千歌をより幻想的な雰囲気へと(いざな)う。




 雲の切れ間から月明かりが射し込む。その光は千歌と少女のいる砂浜へと降り注がれ、千歌の目に映る少女の姿がより鮮明になった。



 すると、少女の歌が突然ピタリと止んだ。胸の前で握りしめた両手を解いた少女が、ゆっくりと身体を回転させて千歌を正面で捉えた。



「こんばんは」



 柔らかに微笑んだ少女が千歌に挨拶をする。



「こ、こんばんは!」



 黙って歌を聴いていたことに僅かな後ろめたさを感じながら、千歌は慌てて挨拶を返した。


 月明かりに照らされ、互いに正面に向き合ったことで、少女の姿がハッキリと映った。


 潮風で揺れ動くブロンドの長髪。白のワンピース越しでも分かるほど、抜群のスタイルを少女は持っている。だけどその端正な顔立ちにはまだ
[1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ