最終話 奇跡
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天の星空の中に天の川が流れている。
その中でも一際強い輝きを放っている星がある。
わし座のアルタイル。はくちょう座のデネブ。そして、こと座のベガ。
ステージ上で輝きを放つLyraは、まるで夜空の中で存在感を放つ夏の大三角のようで。
そんな彼女たちが魅せるライブに、会場の熱気は最高潮に達していた。
最後のサビ。
力強さの中に繊細さを孕んだその歌声に、観客は酔いしれる。
彼女たちは最後まで歌いきり、アウトロに合わせて華麗に舞う。
そして曲が終わる。Lyraが動きを止めると同時に会場から耳をつんざくような歓声と拍手が沸き起こった。
「えー皆さん。次がいよいよ最後の曲です!」
輝穂のMCを聞いて、客席から様々な声が飛び交う。
「今までありがとう!」と彼女たちに感謝する者。「辞めないでー!」と泣き叫ぶ者。人それぞれの想いが客席から溢れ出す。
その想いをしかと受け止めて。
「最後は去年、この七夕祭りで歌った曲です! それでは――」
『ミュージック、スタート!!』
最後の合図により、音楽がが流れ出す。祭りの雰囲気に似合っている、アップテンポなメロディ。
客席はより一層盛り上がる。
今日Lyraのライブを初めて見る者。何度も見たことのある音ノ木坂の生徒、色々とある。その中でも最も多いのは、1年前の七夕祭り。その1度だけ彼女たちのライブを見た人たちだろう。
自分の知っている曲が流れて、盛り上がらない筈がない。
観客たちは声を張り上げ、手を大きく突き上げ、目をよく凝らして、耳を澄まして。それぞれのやり方でライブを楽しもうとしている。
曲がサビに入ろうとしている。そしてサビへと突入した瞬間。
会場全体が揺れ動いたかのような歓声が沸き起こる。
その声に負けないように、Lyraの3人は声を張り上げて歌う。Lyraと観客たちが一体となって盛り上げる。
最初、アイドルを始めたばかりの頃。Lyraはこの光景を想像できただろうか。いや、できるはずがない。
今目の前に広がるこの光景は、紛れもなく彼女たちの軌跡、その終着点であった。
瑞姫は想う。
音楽室でピアノを弾いて歌っていると、突然押しかけてきたクラスメイトの飛鳥と輝穂。いきなり現れておいてアイドルをやらないかなんて、普通ならありえない。
でも彼女たちは、私の歌を褒めてくれた。
初めてだった。
自分の歌を、ピアノを、容姿までも余す事なく認めてくれたのは。その言葉に内側から沸き立つ勇気と、自信をもらった。
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