第十一話 決意
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」
男性は柔らかな笑みを浮かべながらそう答えた。
「ああ、そんなに怖がらなくても大丈夫。私はこういう者なんだ」
そう言って男性は、スーツの胸ポケットから名刺を取り出して輝穂たちにそれぞれ渡した。
「芸能事務所の、社長さんですか」
「ほぇ〜、すごいね」
「それで、芸能事務所の社長さんが、どうして私たちに?」
飛鳥と輝穂が目の前の人物に関心している中、瑞姫は男性に尋ねた。
「単刀直入に言おう。私は君たちをスカウトしに来たんだ」
「スカウト!?」
男性の思いもよらぬその発言に、輝穂たちは3人とも驚きの表情を浮かべた。
「ああ、そうだ。学校の部活でアイドル活動をしている君たちは、我々の業界で『スクールアイドル』と呼ばれ、注目されているんだ」
「スクールアイドル……」
初めて耳にするその単語を飛鳥は確認するように小さく呟いた。
「そう、スクールアイドル。去年のクリスマスだったかな。君たちのライブを映像で見させてもらったよ。とてもいいライブだった。技術はまだまだ足りないがポテンシャルは素晴らしい」
「あ、ありがとうございます」
目の前の芸能事務所の社長という人物に賞賛され、瑞姫は照れながら礼を述べた。
「我々の事務所に所属すれば、より良い環境でレッスンをすれば、君たちならいずれトップアイドルになれる。そうすればテレビにだって出られるし色んな芸能人に会える。お金だって普通の人の何倍も手に入れられる」
男性は身振り手振りで芸能界に入ることの良さを輝穂たちに伝える。
「どうだろう。うちの事務所に入ってトップアイドルを目指してみないか?」
最後にそう言って、男性は輝穂たちの答えを待った。輝穂たちの表情は一様に硬く、突然降ってわいた話に困惑していた。
「今すぐに入ってくれとは言わないよ、高校を卒業してからでも構わない。実を言うと、君たちのライブを見てから私はすっかり君たちのファンになってしまってね。本当は君たちのつくりだす奇跡をもっと近くで見ていたいだけなんだ」
男性は優しさの篭った口調で輝穂たちに語った。突然自分たちの前に現れた社長を名乗る怪しい人物だったが、輝穂たちはその言葉に裏があるようには思えなかった。
やがて、輝穂が重たい口を開いた。
「……考えさせてください」
「わかった。どうするか決まったら名刺の番号に連絡してほしい」
そう言って、男性は輝穂たちの前から去って行った。
*
その後、輝穂たちは重たい足を動かして歩いた。
道中、3人の間に会話はなく重たい空気が漂っていた。
そして気
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