第四話 場所
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新入生歓迎会でのライブが終わった翌日、Lyraの3人は今日も神田明神男坂で早朝の練習をしていた。
それぞれ石段を駆け上がると、乱れた呼吸を整えようとその場にへたり込んで休憩をとる。
「昨日のライブ、楽しかったね」
興奮がいまだ冷めやらないといった様子で輝穂は言った。
「そうだね、上手くできたと思う」
「まあ欲をいえば、もう少し見に来てくれる人がいればもっと盛り上がると思うわ」
それに答える飛鳥と瑞姫の様子も、少し興奮気味だった。
「じゃあ次は、もっとたくさんの人に見に来てもらうために頑張らないとね!」
輝穂はこぶしを握り締めて強く言った。その言葉に、飛鳥と瑞姫も強く頷いた。
ふと、建物の陰から強い視線を感じて飛鳥が振り向いた。
しかし、視線の先には誰もいなかった。
「どうしたの飛鳥?」
そんな飛鳥の行動を不思議に思って瑞姫が尋ねる。
「テル、瑞姫。さっき後ろに誰かいなかった?」
飛鳥の言葉に首をかしげる輝穂と瑞姫。3人は輪のように座っていて、輝穂と瑞姫からは飛鳥の背後が良く見えるのだ。
再び視線を感じて、飛鳥は素早く振り向いた。しかし、またしても誰もいない。
「誰かいた? ストーカーとかだったらどうしよう……」
そんな想像をして飛鳥はだんだん不安になってくる。
ニュースでたまに耳にするストーカーという言葉だが、自分が被害に遭うと考えると女子高生にとっては恐ろしいものだ。
「私見てくるよ!」
そう言って輝穂は立ち上がった。困っている友人がいると放っておけない性格なのだ。
「ダメだよテル、危ないよ……」
弱気なところはあるが思いやりのある飛鳥が輝穂を止めようとする。
「なら、3人で見に行けばいいわ」
「そ、それなら……」
正義感の強い瑞姫の言葉に、飛鳥はうなずいた。
付き合いの長い輝穂がいて、まだ付き合いは短いが良い関係を築けている瑞姫が一緒にいるなら飛鳥も安心できる。
3人は立ち上がって、慎重に飛鳥の言っていた建物のところまで歩いていく。
飛鳥の右手を輝穂が、左手を瑞姫が握っていて、飛鳥の不安な気持ちを少しでも和らげていた。
建物の角まで来た3人はそこで一旦立ち止まる。そしてタイミングを合わせて一気に飛び出た。
しかし、そこに人の姿はなかった。
「誰もいないね」
「そうね」
「やっぱり私の勘違いだったのかな……きゃっ!」
すると突然、飛鳥の両膝に後ろから押されるような力が入って、飛鳥がその場に崩れ落ちた。
手を繋いでいた輝穂と瑞姫も一緒になって崩れ落ちる。
飛鳥が受けたのは膝カックンだった。
「いたたた……」
「い
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