第三話 舞台
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顔には悲壮感がまったく感じられず、逆に強い決意を感じられる。
そして、輝穂は一歩前に出た。
「みなさんこんにちは、Lyraです! 今日は来てくれてありがとう!」
その力強い言葉と姿勢に、飛鳥と瑞姫の不安は自然と消え去って行った。
「精一杯歌って踊ります、どうぞ楽しんでいってください!」
音楽のイントロが流れ出して、彼女たちのステージが始まった。
アップテンポな曲調に合わせて3人は踊りだす。
見てくれている人はたしかに少ないが、それでも見に来てくれた人のため、彼女たちは精一杯のパフォーマンスを見せる。
最初の歌いだしは輝穂。思い付きでアイドルを始め、飛鳥と瑞姫を誘って今がある。
その力強い踊りと歌声は、見る人を引き付ける。
輝穂の次は飛鳥。彼女のつくった衣装が踊りとともにヒラヒラと舞う。
柔らかくなめらかな踊りと歌声は彼女たちに調和をもたらす。
Bメロに入って瑞姫が歌いだす。綺麗で伸びのある踊りと歌声には存在感があり、彼女のつくった曲に見事にハマっている。
曲はサビへと突入し3人の歌声が重なった。それぞれ個性的な歌声は、重なると見事なハーモニーを奏でていた。
踊りもよりいっそう激しさを増して、少ない観客たちからは感嘆の息が漏れる。
この瞬間、この空間はまちがいなく彼女たちLyraのステージだった。
やがて曲は最後のサビに突入し、彼女たちは最後の力を振り絞って身体を動かし、歌声を絞り出す。
3人はお互いに顔を見合わせて、最後の瞬間を計った。
最後の歌詞を歌い切って、あとは曲のアウトロに合わせて踊りきるのみ。
そして演奏が終わると同時に最後の決めポーズをとって、彼女たちのステージは終わった。
3人とも呼吸が乱れて肩を上下させている。けれど表情は晴れやかで笑顔を浮かべていた。
客席から、小さく手を叩く音が聞こえた。見てくれた人数は少ないけど、見ていた人全員が彼女たちに拍手を送っていた。
輝穂は飛鳥と瑞姫に目配せをして、笑顔を見せる。
3人は舞台の一番前まで歩いて行ってお互いの手をとった。
「「「ありがとうございました!!」」」
観客たちに頭を下げて見てくれた礼を言う。
彼女たちへの拍手は少しずつ大きくなって、いまだ鳴りやまない。
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