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ヘタリア大帝国
210部分:TURN20 エルミーの来日その十一
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TURN20 エルミーの来日その十一

「しかしなのですか」
「陸軍では牛肉の大和煮の缶詰だ」
「それが最大の御馳走なのですか」
「そもそもだ。ステーキなぞ贅沢にも程がある」
「では焼き魚もですか」
「いや、鰯はいいが」
 それはよかった。だが秋山は不安になってさらに問うた。
「鶏肉等は」
「鶏肉はいい」
「しかし牛肉はなのですか」
「安心するのだ。体格の維持の為に牛乳は奨励している」
「牛乳はいいのですか」
「安価だからな」
 ここでも質素さが考慮される陸軍だった。
「後は玄米と味噌汁と少量のおかずさえあればだ」
「陸軍はいいというのですか」
「何度も言うが海軍は贅沢に過ぎる」
 山下は憮然とした顔で語る。
「今回もデーニッツ提督の歓迎でなければここにはいない」
「ううむ、山下さんもです」
 その山下にだ。日本が言ってきた。
「落ち着いて下さい」
「祖国殿がそう仰るのなら」
「お願いします。今は親睦の場ですから」
「わかった。それでは」
 山下も祖国に言われると弱い。生真面目で忠誠心の強い彼女なら尚更だ。
 しかしエルミーはその山下の言葉にだ。目を輝かせて頷いて述べた。
「日本帝国は素晴らしい軍人がおられますね」
「山下さんのことですね」
「はい、質素倹約を常に忘れず自分自身に非常に厳しい」
 まさに山下の本質である。エルミーは既にこのことをよくわかっていた。
「尚且つ優秀な方ですね」
「はい、軍人として何の不足もありません」
 日本が最もよくわかっていて保障できることだった。
「素晴らしい方です」
「そうですね。この山下将軍がおられるのなら」
 陸軍なので提督にはならない。将軍になる。
「日本帝国も安泰ですね」
「この男が身をあらためればな」
 山下は東郷をまた睨み据えた。
「そうなのだがな」
「ははは、利古里ちゃんは相変わらず手厳しいな」
「当然だ。若しデーニッツ提督と何かあれば」
 完全に本気の言葉だった。
「斬る。覚悟しておけ」
「ご安心下さい、私もです」 
 エルミーもしっかりとした目で山下に応える。
「その時は容赦なく射殺します」
「そうだ。そうするべきなのだ」
 拳を振りかざしだ。山下は力説に入った。
「女たるもの貞節を護るべきだ。夫となる方以外の殿方に肌を許してはいけない」
「その通りです。山下将軍に同意します」
「では機会を見て陸軍の食事も食べてもらいたいが」
「お願いします」 
 こうした話をしながらだ。エルミーは長門の士官室において海軍の食事を馳走になった。そうしてその後でだ。フォルケーゼに戻って部下達に話したのだった。
「日本帝国軍の食事ですが」
「どうでしたか?」
「どういったものでしたか?」
「洋食でした」

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