210部分:TURN20 エルミーの来日その十一
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そうだったというのだ。まずは。
「ですからフォークとナイフ、それにスプーンを使いました」
「では我々の食事と変わらないのですか」
「そうしたものだったのですね」
「はい。ただ」
「ただ?」
「ただといいますと」
「味は違いました」
ドイツの味とはだ。また違っていたというのだ。
「どうも薄めで。それに」
「それに?」
「それにといいますと」
「ソイソースの味もしました」
醤油だ。日本の醤油の味もあったというのだ。
「微かにですがどのお料理にも入っていました」
「ううむ、ではチーズやバターよりもですか」
「ソイソースの味がしたのですか」
「乳製品の味は弱かったです」
そうだったというのだ。長門の食事は。
「そしてジャガイモも少なかったですね」
「ではパンの方が多かったのですか」
「そちらでしたか」
「それも白パンでした」
パンと言っても色々だ。これは欧州では常識だが日本帝国では違っていたのだ。
「白のコッペパンが出ました」
「黒パンではないのですか」
「それでは」
ドクツでは黒パンもよく食べられる。そこがかなり違うのだ。
「ううむ、白パンしかないとは」
「日本帝国は変わってますね」
「ですが美味しかったです」
味は満足したというのだ。
「間違いなく我がドクツ軍のものよりもです」
「ははは、我が軍は粗食ですからね」
「それを心掛けていますからね」
「ドクツ軍はジャガイモとソーセージとザワークラフトです」
実際に艦内にあるそうしたものを見回しながらだ。エルミーは話す。
「それと黒パン、贅沢をしてアイスバインがあれば」
「そうですね。戦えますね」
「我々は」
「ビールは言うまでもありません」
これは必需だった。エルミーにしても。
「ですがビールはなかったです」
「ううむ、寂しいことですね」
「そのことについては」
「ワインを御馳走になりましたがやはり」
どうかとだ。エルミーはワインのことは微妙な顔で部下達に話す。
「ビールがないのは寂しかったですね」
「では今から飲まれますか?」
「飲んで一息つかれますか?」
「そうしますか。では」
艦内ではビールを飲みだ。エルミーはようやく一息ついた。日本帝国に入った彼女は緊張の中にあった。だが決意はあった。総統の為にこの国で戦うという決意が。
そのことはビールを飲んでも忘れていなかった。彼女の決意は揺るがなかった。
TURN20 完
2012・4・17
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