シーホーク騒乱 6
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とですわ」
「……綺麗ごとを抜かすなーッ!」
鋼鉄の腕が振り下ろされる。
ひとりの少女を血肉の塊にせんとする拳鎚はしかし、ひと振りの剣によって防がれた。
甲高い金属音が鳴り響く。
秋芳の手にした魔剣の剣先が鉄拳を止めていた。
真上からの垂直な打撃を、真下から垂直に受け止めたのだ。
「…………」
「…………」
カルサコフはそのまま強引に押し潰そうと力を込める。
雷霆万鈞の剛力に秋芳の足下の石畳に亀裂が生じた。しかし秋芳も剣も微動すらしない。
元の筋力にもよるが、たとえ【フィジカル・ブースト】で増強されていたとしても生身でここまでの力が出せるものなのか、手にした剣はなぜ折れないのか。
「おまえは何者だ」
「…………」
「なぜ応えぬ!」
「なぁ、お嬢。俺の家にはいくつか家訓があるんだ。というか俺が作ったんだ」
「どういう家訓を作りましたの?」
「初対面の相手を呼び捨てにするやつは猿の仲間だから返事をする必要はない」
「なかなか良い家訓ですわね」
「だが名乗りもせずに人に名を訊ねる相手にどう接しろという家訓はまだない。そんな猿にも劣る無礼者が存在することを失念していたよ」
「……カルサコフ! それが私の名前だ。わかったら死ね、名も無き雑草めが!」
再度拳を振り上げ、叩き下ろそうとするのだが、動かない。
まるで強力な磁石どうしがくっついてしまったかのように、拳と剣が密着している。
「!?」
「賀茂秋芳。それが俺の名前だ。わかったかテロリスト」
剣を持たないほうの手で掌打を放つ。
相手の拳を止めるよう、体内を巡らしていた内力を順停止法から円転合速法へとつなぎ、螺旋回転による捻りをくわえた一撃。
空手の透かしや骨法の徹しのような浸透系の一撃がルイーツァリの膝に撃ち込まれる。
「――ッ!?」
『損傷率三パーセント。自己修復機能ON、戦闘続行問題なし』
コンソールに被害状況が表示される。
軽微の損傷。
だが、はじめて。ここにきてはじめてダメージを受けたのだ。
続けて剣を閃かせる。狙うは間接部分。といっても四メトラ超えの巨体だ、腰から下の膝や足首の関節部分に斬撃を放つ。
介者剣法だ。
『――人工筋肉破損――損傷率八パーセント――自己修復機能ON――戦闘続行問題なし――』
ダメージは微々たるもの。だが蓄積されていけば無視はできない。
早急に処理する必要がある。
「おのれカモ・アキヨシ! おまえは何者だ!?」
「知ってるじゃねーか」
「ウラーッ!」
鉄拳鉄脚を振り回す。その様はまさに鋼の旋風。
だがかすりもしない。まるで風に揺れる柳葉や波に乗って漂う水草かのように、秋芳はするりするりと回避する。
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