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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
シーホーク騒乱 5
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技が込められており、すり上げ、すり下ろされて上段や下段からの斬撃がくる。
 疾風の突きに迅雷の薙ぎ払い、颶風のような振り回し。
 間髪入れずの連続攻撃をなんとか受け流しつつ、反撃する。

(シャア)ッ!」

 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。
 秋芳は相手の長い間合いを封じるため槍を断とうと、けら首の部分を狙って魔剣を振るう。
 甲高い金属音と青白い火花が散った。

(硬い!)

 鉄の鎧を断ち切る魔剣でもっても武器破壊ができない。
 なんらかの魔力が込められていることは見鬼で視て取れたが、種類まではわからない。だがこの槍にも不壊の魔力が付与されているのは確かなようだといまの一撃で確信した。

(壊れない、てのは一番便利でやっかいだわなぁ)

 たがいに魔術なし、魔力の宿った武器を持っての白兵戦。
 技量は互角。
 となれば武器の性能が大きく左右する。
 剣と槍。
 剣のほうが不利だ。
 剣道三倍段という言葉がある。
 空手や柔道など素手の格闘家が武器を持った剣道家に勝つには三倍の段位、実力が必要。
などと書かれることが多いが、これは漫画発祥の言葉で、本来は槍や薙刀といった長物を持った相手に刀や剣で立ち向かうには、剣の使い手は相手の三倍の技量が必要である。
 という考えが元になっているが、実はこの『三倍段』というのも新しい考えで、さらにさかのぼれば攻撃三倍の法則から来ている。
 敵を攻めるには三倍の兵力を要し、守るには三分の一で足りるという、第一次世界大戦でドイツ陸軍が研究していた考えだ。

(この三倍″キをいかにくつがえすか。――十なれば即ちこれを囲み、五なれば即ちこれを攻め、倍すれば即ちこれを分かち、敵すれば即ちよくこれと戦い、少なければ即ちよくこれを逃れ、しかざれば即ちよくこれを避く――数、数、数、数の差、数を作るには……)

 秋芳の身が宙を舞った。跳躍したのだ。
 これには一騎打ちを見ていた周りの人々もおどろいた。アニメやコミック、ゲームなどフィクションでは飛んだり跳ねたりといった技がよくあるが、現実にはそうそうない。まず高く跳躍するほどのバネを身につけるのが困難だし、空中では回避行動が困難で隙が生じるからだ。
 利点があるとすれば落下による勢いで攻撃力を上げることと、相手の意表をつくこと。
 はたしてゲオルグ将軍ほどの達人の意表をつくことができるのか?
 否。
 動じることなく空中にいる秋芳に刺突を放つ。槍の穂先が吸い込まれるように胸を刺し貫いた瞬間、秋芳は霞のように消えた。

「!?」

 感情なき鎧に動揺の色が見えたと思ったのは見ていた人々の錯覚か。
 槍を持った鋼の腕が斬り落とされ、手にした魔槍もろとも地に落ち、続いて鉄兜も地面にころがった。
 

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