シーホーク騒乱 5
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を突破し、槍を持った指揮官に必殺の一撃を繰り出そうと一足飛びに斬りかかった瞬間、指揮官の手にした槍が閃いた。
「ッ!?」
眉間、喉、胸。三か所を狙った正確無比にして神速の刺突が秋芳の攻撃を阻む。
首から上への攻撃は魔剣で受け、胸への突きはとっさに身体をひねることで串刺しを避ける。
だが次の瞬間、紙一重で避けた槍の穂先が水平に薙ぎ払われた。
「――ッ!」
地面にころがる寸前になんとか体勢をととのえ、槍の指揮官に対峙した秋芳の胸から鮮血が流れ出す。
あやうく胴を両断されるところだった。
鉄布衫功――体内の気を張り廻らせて肉体を鉄のように硬化させる気功術。ルヴァフォースでは硬気功と呼ばれる魔闘術の一種――をもちいて防御しなければ、切り株になっていたことだろう。
「ぬう、あの槍さばきは!」
ウェンディに介抱されて戦闘を遠巻きに見ていた年配の警備官が驚愕に目を見開く。
「あら、おじいさん。なにか知っていますの?」
「まちがいない、あの槍さばきは『ヒドラ殺し』のゲオルグ将軍じゃ!」
「ヒドラ殺しのゲオルグ将軍……」
その名前ならウェンディも聞いたことがある。槍術と用兵術に秀でたレザリア王国の騎士団長。七つ首のヒドラを退治した武勇伝が有名で、一瞬で三つの頭部を串刺しにし、続く一閃で残りの首を斬り落としたという。四〇年前の奉神戦争では彼が率いる騎士団によってアルザーノ帝国側は甚大な被害をこうむった。
本格的に実戦投入された魔導士たちによる魔戦≠フ中で命を落としたが、緒戦において連戦連勝を飾ったレザリアの英雄、アルザーノの悪夢。
「わしのいた部隊はやつの軍と戦ったことがある。そのときのやつの槍さばき、忘れるわけがない! ゲオルグ将軍じゃ! ゲオルグ将軍が地獄からよみがえったのじゃ!!」
「…………」
ウェンディは【センス・オーラ】を使ってゲオルグ将軍だと言われたリビングアーマーを視る。ほかのリビングアーマーたちと同様、その身は魔力の輝きにつつまれているが、アンデッドやイモータル。負の生命力を宿した存在ではない。
だがその動きはあきらかにほかの、いままでたおしてきたリビングアーマーたちとはちがっていた。
「あの槍……」
ほかのリビングアーマーが素手。あるいはたおした相手から奪ったと思われる剣や曲刀など雑多な武装をしているなか、地味だがしっかりとした作りをしている。遠目でよく見えないが、なにか意匠もほどこされているように見えた。
なによりも槍身をつつむオーラ。あれは魔法の武器だ。
振り下ろしを左右に避ければ水平の横薙ぎ攻撃が、後ろに下がれば刺突が、その刺突をはずされたら横薙ぎの攻撃につながる。
下手に受ければ武器を弾き飛ばされるほどの剛撃には精妙な
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