夜虎、翔ける! 4
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し、助かったの?)
あらためてとなりを歩く救いの主を見る。下品にならない程度に染めた明るい茶髪、やや長身で無駄な肉のついてないすらりとした身体つき、清潔感はあるのだが春先に似つかわしくない漆黒の外套と錦の眼帯はなにかのコスプレだろうか……。
「堀川夜虎」
「え?」
「おれの名前。夜虎でいいよ、友だちはみんなそう呼んでる」
「え? あ、はい。あ、あたしの名前は――」
この人に自分の名前を告げても平気だろうか? さきほどのシーンが脳裏をよぎり、思わず口ごもる。
「……平坂橘花です」
だが逡巡は一瞬だった。この人は窮地を助けてくれた恩人だ。いまさら自分になにかしてくるとは思えない。なにかしてきたとしても、あの連中よりましだ。
「よろしくな、平坂。おれも春から立花学園なんだ」
「あ、そうなんですか」
入学式にこんな目立つ男子生徒なんていたかしら。いや、式が終わってすぐ着替えたのかもしれない。しかし眼帯に黒マントとは、またずいぶんと中二チックないでたちだ。
「あの、さっきは助けてくれてありがとうございました」
「ははっ『ました』とか、かしこまらなくていいって。同級生なんだし」
「でも、ほんとうに助かりました。あたし、あのまま殺されちゃうんじゃ、死んじゃうんじゃないかって……」
「もしなんかあったらまた助けてやるよ」
「あ、ありがとう……」
気持が落ち着いてくるにしたがい、さっきの不思議な出来事が気になりはじめる。
いったいどんな術を使って寺島たちを意のままにあやつったのか、そもそも最初空中に浮かんでいなかったのか――。
「あの、堀川君て――」
いったいなにもの? そう問いかけようとしたとき、わずかに表情を変えて足をとめた。
桜の葉がただよう心地よい春風に、害意が混入してきたのを感じとったからだ。
平坂たちの左手には河川敷が広がっているが、ほかの三方向から足音がわき起こって接近してきた。荒々しくアスファルトを踏む足音は中途半端な統一性をもっている。だれかに指揮された集団だが、機動隊や自衛隊のようによくは訓練されていない。たとえるならヤクザや暴走族の群れといったところか。
「かこまれちまったな」
「え? ええ!? えええッ!」
およそ善良とはほど遠い連中が平坂たちのまわりをかこんでいた。人相は醜悪で雰囲気は下品かつ粗暴、将来は政治家の手先か暴力団くらいしか就職先がないようなやからだ。
ある者は両手にメリケンサックをはめ、ある者はチェーンをふりまわし、ある者はバタフライ・ナイフをちらつかせ、ある者はヌンチャクをもてあそび、ある者は木刀をかまえ、ある者は特殊警棒をかざしている。
さすがに拳銃をもつ者はいないが、そのかわりにガスバーナーを手にした者が数
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