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東京レイヴンズ 今昔夜話
夜虎、翔ける! 4
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という律令の解説書などに伝わる秘儀だ。
 その十種とは息津鏡(おきつかがみ)
 辺津鏡(へつかがみ)
 八握剣(やつかのつるぎ)
 生玉(いくたま)
 死返玉(まかるかへしのたま)
 足玉(たるたま)
 道返玉(ちかへしのたま)
 蛇の比礼(おろちのひれ)
 蜂の比礼(はちのひれ)
 品々物の比礼(くさぐさもののひれ)
 これらの神器を合わせて呪文を唱えると、その神威が顕現するとされる。
 しかしいにしえの鎮魂祭(みたましずめのまつり)でこの呪法がもちいられる場合は十個の玉を用意して十種の神宝になぞらえ、由良由良と揺り動かす手法がとられた。
 それゆえに御魂振は玉振りの術とも呼称される。春虎はさきほど復活した神樹に実る霊果、非時香菓を玉に見立てて古代の呪法を再現したのだ。
 御魂振は魂に関わる、こんにちでいう帝国式陰陽術に分類される禁呪だ。謎が多く、使用するのは困難だが、極めれば死せる人も生き返らせる強力な呪術。
 不老不死の霊果である非時香菓ならば玉の代わりの触媒にはもってこいだ。
 悪しき心を殺し、良き心を蘇らせる。
 平坂の意識は精神の奥底へと沈んでいった――。





 きっかけはささいなことだ。
 中学校でオタク趣味全開の話をしていたことが、その手の話題を嫌悪する連中の気に障ったというだけ。
 オタクは数年後には犯罪者に成り下がるんだから、自殺においこんでもいい。
 そのような自分勝手な大義を掲げ、やつらは牙をむいた。
 平坂が階段を降りようとしていたときのこと。後ろから背中を強く突かれてバランスをくずし。転倒しそうになった。
 下手に踏みとどまろうとせずに、勢いでおどり場までの十数段を一気に駆け下り、最後の数段は跳躍して着地して手をついた。インドア派にもかかわらず運動神経の良い平坂だから途中で転ばなかったが、もし転んでいたら大ケガはまぬがれなかっただろう。
 おどり場に手をついたまま恐怖に震えている横を数人の同級生が薄ら笑いを浮かべて通り過ぎていった。だれが突いたのかはわからない。
 だが、ほかの人もその瞬間を目撃していたはずなのに、なにも言わなかった。
 平坂は思った。階段を転びそうになって駆け下りるあたしの姿は、あいつらにとってはさぞ滑稽に見えたんだろう。おもしろかったんだろうな、と。
 人がケガをしたときのことも考えずに。
 頭が悪いというのは知能指数が低いとか偏差値が低いとか学歴がないとか、そういうことではない。頭が悪いというのは想像力がないということだ。想像力がないからこそ、自分の行為がどれだけ恥ずかしいもので、どれだけ醜悪なものか理解できない。
 ああ、なんて愚かで恥知らずな連中なんだろう。
 そのときはまだそう思える心の余裕が、平坂にはあった。

 ある日の
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