夜虎、翔ける! 4
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分も、たちまち赤熱し、操縦するどころではなくなる。
製鉄や鍛冶の神である天目一箇神のたたら祝詞。それは金属を熱する効果があった。
クローラ部分も溶けだし、ゴムの焼けるいやな臭いがただよう。土方男はサウナと化した操縦席からほうり出るように抜け出した。
その眼前で熱気とともに巨大な鉄塊がぐにゃりとひしゃげ、原型を崩す。
「ひいぃっ、バ、バケモノだぁっ!」
いまさらのように夜虎のもつ異能の力を実感した破落戸どもは、砂と泥と唾をまき散らし、周章狼狽のていで退散した。
「おれは化け物じゃなくて、それを修祓するほうだっつうの」
「……ほ、堀川君。いまのって、それにさっきのあれ。あれって呪術。それも甲種よね」
「お、よく甲種なんて言葉を知ってるな。そうだよ」
「甲種呪術。陰陽庁によって確かな効果が認められた呪術……。原則として国家資格『陰陽U種』または『陰陽T種』の取得者のみに行使が許されている……」
「正解、よくできました」
「最初にあいつらをあやつったのは、甲種言霊……」
「それも正解。問答無用であやつることもできるけど、名前を聞いたのはそのほうが効きやすいからだよ」
「それじゃあ、あなたって、ひょっとして……」
「ああ、おれは陰陽師さ」
それが東京都以外の日本全国の霊災修祓および呪術犯罪の取り締まりを一任された独立陰陽捜査官、堀川夜虎との出会いだった――。
夢を、夢を観ていた。
楽しい夢を――。
平坂は楽しい夢を観ていた。
都会から来た陰陽師の少年に窮地を助けられたのが縁で行動をともにすることになる。
東京以外でもまれに起きる霊災修祓や呪術犯罪の取り締まりをする任務に就いている独立陰陽捜査官、堀川夜虎。
闇鴉のふたつ名をもつ十二神将である彼に呪術を教わり、陰陽師としての才能を開花させた平坂は、やがて夜虎にパートナーとして認められることになる……。
楽しい楽しい、とても楽しい、そんな夢を――。
海沿いの道を牛車が走る。田嶋の私兵化した不良警官との戦闘で外装が多少ほころんでいる朧車の中には春虎たちの姿があった。
「いまさらだが、よかったのか。せっかくお目当ての品を見つけたのに、全部使っちまって」
琥珀色の液体に満ちたグラスで唇をしめらせ、角行鬼が問いかける。
「いいのさ、ああまでしないとあの子は救えなかった」
催眠療法。ヒプノセラピーという心理療法が存在する。
普段は心の奥深くに沈んでいる潜在意識の扉を開け、その中に注意を向けていく心理療法で、通常はかいま見ることのできない潜在意識の中にある膨大な記憶の中から必要な記憶をすくい上げて問題解決や自己成長をうながすというものだ。
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