夜虎、翔ける! 4
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神だ。
式虎たちは火傷をまぬがれた男たちに応戦する。
まるで一流の軽業師のような身軽さをはっきし、水平にふりまわされたチェーンを跳躍してかわし、相手のあごを軽く蹴る。たいして力を込めたようには思えなかったが、口から折れた歯をまきちらして転倒した。着地した式虎の頭上に木刀が猛スピードで落ちかかるが、一転してそれをかわし、地についた両手を軸にして脚で相手の脚を払った。カポエイラのエリコーピテロ――逆立ち回転蹴りを思わせるそれを受けて膝を砕かれた相手がもんどりうって砂をかむ。跳ね起きようとした式虎に特殊警棒をふるっておどりかかった男は、素早くかかげられた式虎の両足に腹を乗せられた形になり、そのまま足をふるうと放物線を描いて川面へと落ちていった。
三〇人を超す男たちのほとんどが立ち上がれなくなるまで三分も要さなかった。
「おんどりゃアホんだら! しばいたろかボケェ!」
べつに大阪出身でもないのに大阪弁で息巻いたニッカポッカ姿をした土方ふうの男が走り、堤防のそばにたどりつく。堤防補習用のショベルカーが置いてあり、それに乗り込むと巨大な土木建設用機械を動かしはじめた。
ショベルカーやクレーンなどの鍵はおなじ機種ならおなじ鍵で動かせる。男は建設関係の仕事をしたさいに鍵をちょろまかしていたので、それを使ったというわけだ。
オレンジ色の鉄塊が夜虎目がけて突進を開始した。
「ショベルカーなんかにやられたんじゃ土蜘蛛にもうしわけがたたないよなぁ、なにせおれは装甲鬼兵の生みの親なんだし」
微塵も動じずに肩をすくめる。狼狽したのは式虎にのされてへたばっている連中だった。そのまま寝そべっていてはうなりをあげて前進してくるショベルカーに轢き殺されてしまう。善良な市民を脅しつけるときの元気はどこへやら、泣き声をあげ、血と涙と小便を流しながらショベルカーから逃れようとした。
それでも動けない者がいて、肉薄するショベルカーを恐怖の目で見上げながら「おかあちゃーん」「ナナイー」「オモニー」と、多種多様な母国語で泣きわめく。
完全に血迷った土方男は味方に目をくれず、ひたすら巨大な土木建設機を驀進させるばかりだ。
「まったく、しょうがないな……」
いくら悪党でも目の前で轢死されるのは寝覚めが悪い。
「――かけまくもかしこき鍛冶の祖神となる金山の神火の神風の神らの大前にかしこみかしこみももうさく――八十国島の八十島を生みたまいし八百万の神たち生みたまいしときに生まれたる天目一箇神命をひのもとの冶金もろもろの金の工の祖とあがめまつる――」
夜虎が祝詞を唱えると、ショベルカーが急速に熱を帯びはじめた。
「アチチチチッ!」
巨大なアームも、それをささえるブームも、先端のバケットも、ベースマシン部
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