夜虎、翔ける! 4
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を強化した術式を組み込んである。
竜に変化したばかりで霊的に不安定な存在である平坂に対し、これは一種の鎮静剤のような効果を発揮した。
(……夜虎、君?)
「街を破壊し尽くすつもりかよ、まったく。帰るぞ、とりあえずその姿をなんとかしないとな」
(……いやよ、どこにもいかない。帰れない。あたしはずっとこのままでいたい)
「平坂っ」
(やっと、やっと手にした異能の力。だれが手放すものですか)
金縛りによって鎮められていた平坂の霊気がわずかに揺れて変調をみせる。いやな気がかすかにただよう。
瘴気だ。
平坂の心に歪みが生じつつある。
(こんなすごい力を手に入れたのに、いまさらつまらない人間なんかにもどってたまるものですか)
「力ってのは尊いものだ。むやみやたらにふるっていいものじゃない。そんなものはただの暴力だ。いまの平坂は力にふりまわされている。それはな、よくないことなんだよ」
(……その『よくないこと』に、あたしはずっと晒されてきたのよ)
「え?」
(あたしもね、真森学園には転校してきたくちなの。前の学校でいじめられてたから)
「なんだって?」
地味な外見ながら溌剌としてはっきりとものを言う平坂がいじめを受けていたとは、想像できなかった。
(小学校、中学校、高校、真森に入るまえまでずっといじめられてきたの。だから真森に入るときに決めたの。あたしは変わる。生まれ変わるんだって。いじめられ続けてきた平坂橘花はもう死んで、あたらしい平坂橘花が生まれるんだって。……でもね、夜虎君。そんな単純には生まれ変われなかったわ。ずっとくすぶってたの、昔の、いじめられてた弱いあたしが)
「…………」
はじめて会ったときから平坂は妙なテンションだった。個性的な言動で周りを驚愕させる『典型的なオタク女子』という感じだったが、あいにくとこの学園にはその手のタイプが多かったので特に気にはならなかった。個性うんぬんというのなら、陰陽塾にもとんがった連中はたくさんいた。
だがそれは素の平坂ではなかったのだ。いつわりの自分、かりそめの仮面をかぶり、ずっと生活していたのだ。
「だからって暴れていい理由にはならない」
(正論ね、夜虎君。いじめられてたからって、人をいじめていいわけがないわ。でもね――。それがどうしたっていうのよ!)
それがどうした――。おそらくは宇宙で最強の言霊を口にした。
(大陰陽師のあなたにあたしの人生がわかる!? どれだけみじめな人生だったか! ずっといじめられ続けてきたあたしの気持ちがっ! 教科書のページを接着剤でくっつけられたり、上履きに水飴を入れられたり、机の上にゴミ箱の中身をぶちまけられたりもしたわ。お腹をなんども蹴られ、教室でパンツ
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