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魔法少女リリカルなのは 〜黒衣の魔導剣士〜 Another
第8話 「懐かしき重み」
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なことを考えながら俺は倒れていた車イスを起こす。誰かが駆け付けるかとも思ったが、他の場所でも本を大量に落とす人でも居たのか人が来る気配はない。
「えっと……何で私に近づいてくるんかな?」
「乗せるのを手伝うからだけど?」
おそらく目の前に居るはやても俺の知る彼女と同様に大抵のことは自分ひとりで出来るのだろう。故に手伝おうとしても断るだろう。
とはいえ、もしも人が来たしまうと俺は足の不自由な少女を助けようともしない奴に見えるはずだ。俺にかつての世界の記憶がなければ、そう見られても構わないと思ったかもしれない。
だが現実は、身体に引っ張られている部分はあるとはいえ精神は大人。子供が困っているのに助けないという選択はしたくない。
「ちょっ、だから気安く女の子に触れるんは……!」
「はいはい、それは分かってるから今はちゃんとつかまってくれ」
そうじゃないと余計に重い。
昔の俺だったなら確実そう言っていただろう。そして、きっとはやてにそんなことを女の子に言ったらダメだと叱られたはずだ。
でも今の俺は違う。
そんな風に言おうとした。だけど言えなかった。
だって今感じている重みは、この子とは違うあの子のことを思い出すものだったから。仮に事件が始まる少し前ではなく、数年前からこの世界に来ていたなら反射的に涙を流していたかもしれない。それほどまでに今の俺には懐かしくも切ない重みだったのだ。
「そ、その……ずいぶん慣れてるんやな」
「何が?」
「何がって……普通の子は車イスとか乗ってないやろ」
そう言うはやての口調は素っ気ない。
同年代の男子に慣れていないように思えるので照れ隠しかもしれないが、純粋に普通とは違う自分に負い目などを感じているからなのかもしれない。
世界の辿る大きな流れは変わらない。
ならばこのはやても闇の……壊れてしまった夜天の書の影響で後天的に車イス生活を始めたのだろう。そこは変わらないと推測できる。
だが俺の知るはやては人前では決して弱い自分を見せようとはしない子だった。でも目の前に居るはやては俺の知るはやてではない。
その証拠に……今見えているはやての顔は、見覚えがあるように思えてどこか違って見える。
「誰だって怪我したり、病気になれば車イスを使う。俺からすれば君は普通の女の子だよ」
車イスにはやてを乗せながら思っていることは素直に口にすると、はやての顔に再び赤みが差した。
その姿は俺の記憶に残るすっかり大人になってしまった彼女とは違い、素直に可愛いと思える。彼女にもこのような時期があったように思えるが、どうしてあのように育ってしまったのか。
まあ……人の性格は環境に作用されるわけだが。
故にこの子も俺の知る彼女のようになる可能性はある
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