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東京レイヴンズ 今昔夜話
夜虎、翔ける! 3
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が目を疑った。相手はあの北辰王夜光。それがこうもあっけなく勝負がつくとは、こうもたやすく死んでしまうとは、信じられなかった。

「いまなにかしたのか?」
「ななっ!?」

 春虎が、地に落ちた首がしゃべった。
「おのれ面妖なっ!」

 ふたたび糸が銀光をはなち、地に落ちた春虎の顔が四つに断ち切られる。

「痛いじゃないか」「乱暴だな」「お里が知れるな」「呪術者なら呪術を使えよ」

 するとどうだろう、四つの肉塊が小さな春虎と化して口々に不平をもらす。

「こ、このような呪術など……、急々如律令(オーダー)!」

  狼狽した地州は身じろぎして護符をばらまいた。なんらかの呪術とみて、とにかく呪力の遮断をこころみようとしたのだ。

「無駄無駄」「無駄無駄」「無駄無駄」「無駄無駄」
 春虎のよっつの口から笑いまじりの言葉が出た直後、地州の呪力がのたくり、自身の符術を崩壊させた。術式の半端に機動した護符が一瞬だけ光を放ったのち、燃え尽きて地に舞い落ちる。

「さっき言ったよな『きついお仕置きが必要みたいだな』て。これから折檻する悪ガキ相手に悠長におしゃべりしたのはなんでだと思う」
「もしや、幻術か!? ええい、ならばこれならどうだっ!」

 地州を中心とした半径数十メートルの空間が霊糸の刃で満たされた。

「あイタっ」「あ〜あ、大腸も小腸もバラバラだ」「肝臓はどこに飛んだ?」「心臓はここか?」

 縦横無尽に乱れ飛ぶ霊糸刃が春虎の身体を縦横無尽に切り刻み、無数の肉片をまき散らすも、四体のミニ春虎たちはなんの痛痒も見せずに嬉々としてはしゃぎまわり、おのれの臓物をオモチャにしてはしゃぎまわり、あろうことかそれを投げつけてくる始末だ。

「うわっぷ!? ええい、やめろ汚らわしい!」
「「「「おまえがまき散らしたんだろ」」」」

 実に気色悪い。これには地州も動揺の色をかくせなかった。
 幻術はおもに二種類ある。本来その場に存在しないものを立体映像のように作り出す物理的なものと、対象の心に働きかけて、その者にしか見聞きできない幻を知覚させる精神的なものだ。
 前者に分類される幻術だと判断した地州は広範囲に霊糸刃を放ち、幻影にひそんでいるであろう春虎を幻もろとも切断しようとこころみたのだが、そのもくろみははずれた。

「くっ、この私にまやかしの呪をかけたというのか!? しかしいつの間に……」

 精神に呪を注入し、五感をまどわす。
 侵入の意志をおびている呪が心に入り込めば、受けた側は本能的に防御しようとする。意識せずとも霊気が防壁となって異物の侵入を阻止しようとするのだ。
 こうした反応は日常的に呪力をあつかう陰陽師には特に顕著で、精神系の幻術を成功させるにはこの本能的防御を崩す必要があるので
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