夜虎、翔ける! 3
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火を消したのか、なまはんかな水行術でどうにかなる規模の火災ではなかった」
「ことわる。おまえに教えてやる義理はない」
「手の内は明かさぬ、というわけか。まぁ呪術者ならばとうぜんだな。……さきほどのパーティ会場でおたがいの考えに相違があるのはわかった。だがこのような秘術の使い手、ぜひともわが陣営に迎え入れたい。もういちど言おう、北辰王夜光よ、私とともに新たな呪術の世を築こうではないか!」
「ことわる。おまえに同行する義務はない」
「なぜそうもかたくなにこばむ」
「さっき呪術者はえらいだの優れているだの言っていたな。半世紀以上も前に流行った優生思想という病気をまき散らそうとする狂人につき合うほど、おれは愚かでも狂ってもいないからだ。それに龍脈の力を個人で御そうだなんて暴虎馮河の愚挙だね、如来眼の力でもないかぎり、雄大な気の流れを制するのは不可能だ。おまえひとりが気に飲まれ、消滅するのは自業自得だが、それによってどれだけの被害がまわりに出ると思っている。そんなふざけた計画につきあえるか」
「なぜそのように可能性を否定する。呪術は、陰陽の業は無限の可能性を秘めている。げんに北辰王よ、あなたは過去、みずからの手でそれを実践してみせた」
「だからだよ、熱に浮かされて狂気に飲まれ、おれは陰陽の、調和の道を踏み外した。その結果があの霊災だ。おまえのしようとしていることは日本中をいまの東京に、霊災多発地帯にしかねない」
「そうしないためにもあなたのような優れた呪術者がひとりでも多く必要なのだ。……それと優生思想のどこが悪い。いにしえより人にはわずかな割合で霊気を視ることができる、見鬼の才を持つ者が生まれている。選ばれた日本人の、さらに選良された人種。それが呪術者だ。優秀な者が頂点に立つのは自然の摂理だろう」
「それがおまえの独裁を正当化する口実か」
「無能な民主政治よりも有能な独裁政治のほうがましではないか」
「いいや、たとえ無能でも民主政治のほうがましだ」
「これはこれは! 無能で腐敗した政治家と、罪なき者に罪を着せ死に追いやることもあるのに反省も責任もとらない恥知らずの官僚に支配されるいまの日本がましだと言うのか」
「おれたちは民主政治のもとにあって民主政治の悪口をいくらでも言える。だけど独裁政治のもとでは独裁政治の悪口は言えない。その一点だけでもじゅうぶんすぎるほどだ」
「私の支配する世界では、私に対する批判を口にすることをゆるすぞ」
「口にすることはゆるしても、口にしたことはゆるさない。そのつもりだろ」
「ふふ、そうだとも。この私を否定する者は断じてゆるさぬ。この手で処断する」
「ならいますぐおれを処断してみろ、青二才」
「…………」
「…………」
糸が奔った。
春虎の首が落ちる。
「なに!?」
地州はわ
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