夜虎、翔ける! 3
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、対人においては戦闘能力を奪うことを目的とする兵器だ。
あまりにも大きな音は内耳を傷つけ、平衡感覚を失わせ、ときに気絶させる。
突きも蹴りも斬撃も刺突も呪術も効果が薄いとみた角行鬼は至近距離からの音の弾丸で地州の耳を撃ち抜いたのだ。
鬼哭轟々。
大音圧が地州の鼓膜をやぶり、頭蓋を叩き、脳をゆさぶる。
本来なら一〇メートルも離れていない場所にいる飛車丸や早乙女にも害がおよぶところだが、呪術で作った遮音壁がすさまじい轟音を防いでいた。
地州の身体から霊糸がかき消える。昏倒寸前のダメージを受け、常世神をわが身に降ろす精神集中がとぎれたからだ。
耳から血を流し、酩酊したようにふらつく足で丹蛭をかまえるも、まったくさまになっていない。どう見ても戦闘続行は不可能に見えた。
「拳や呪術は防げても、たんなる音は防げなかったみたいだな。おしまいだ、小僧。いままでのツケをはらってもらうぜ」
「しぃ、シキシキっ、シぃキ神ふゼイイぃぃぃがぁ、図にっ、乗るな、よッ! きぇぇぇっ!」
丹蛭の刀身がのびて、鞭のようにしなる。だがその大ぶりの攻撃は角行鬼にも飛車丸にも早乙女にもとどかない、あらぬ方向にむけられた。
まともに刃をふるうことができず、不発に終わった。角行鬼も飛車丸も早乙女も、そう思ったとき、カエルを踏みつぶしたような声が聞こえた。
神州だ。
たおれていた神州の身に丹蛭が突き刺さっている。
「ぐぇぇぇぇっ!?」
神州の顔色が赤から青、黒、そして白くなり、全身がしぼみはじめる。妖刀丹蛭に生気を吸われ、ミイラのように変わり果てた姿になって絶命した。
それが半世紀近くものあいだ立花の地を支配してきた帝王のあっけない幕切れだった。
「この外道が!」
ふるわれた拳と刃はしかし、ふたたび出現した霊糸によって防がれてしまう。
地州はひとひとり分の生気を吸収することで常世神の力を行使する回復したのだ。
「式神風情がこざかしい真似をする。もはや手加減は不要――。ぬ?」
対岸で猛り狂っていた火災がいつの間にか鎮火している。
「ほう、あれほどの猛火を消すとは、さすがは北辰王。土御門夜光といったところか。ふっふふ、これはおもしろい」
「よそ見をするなッ!」
轟ッ!
ふたたび角行鬼の大音声がとどろき、室内にあるガラス製や陶器製の食器が抗議の叫びにも似た音をたてて無残に割れ散る。だが地州の身にはなにひとつ痛手をあたえていない。先の音圧攻撃にそなえて耳孔に霊糸をつめたのだ。
「大地の気を弑す工場は消えた。これより復活せし龍脈の力をわがものにする。おまえたちにかまっているひまはない。こいつらの相手でもしていろ」
地州が袖をひるがえすと無数の白いかたまりが床にばらま
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