アナタと寄り添うミライ
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った。
およそ半年ぶりに訪れたけど、あの時から何も変わっていない。
花丸さんと一緒に整理した書類もそのままの位置にあって、なんだか懐かしく感じる。
長年使っていた机を撫でる。
たくさんの思い出が詰まった生徒会室、そして浦の星女学院。
ここにいられるのも今日で最後。
花丸さんと一緒にいられるのも、今日で最後なのだ。
ガラガラと、扉が開く音がする。
視線を向けるとそこには、花丸さんが気まずそうな表情で立っていた。
「花丸さん……」
久しぶりに見る彼女の姿。なぜだか分からないけど涙が出そうになり、私はそれを必死で堪える。
「ダイヤさん、どうして急にマルを……?」
少し遠慮しながらも、花丸さんは生徒会室に入り私のもとへと向かってくる。
彼女の声も、その口癖も、耳にするのは随分と久しぶりだった。
「その、花丸さんに謝りたくて……」
「謝る? ダイヤさんがマルに?」
「ええ、そうですわ」
本当は呼び出したことに理由などなかった。
ただ無意識に出た花丸さんの名前で止まった卒業式を、どうにかしようと気がつけば花丸さんに来るよう言ってしまったのだ。
だけど、実際にこうして花丸さんが来てくれた。
それなら前から謝りたいと思っていたことを、ここで言うことにしよう。
花丸さんとこうして学校で会えるのも、今日で最後なのだから。
「その……あの時のことはごめんなさい」
「あの時……?」
「えっと、その……半年前、私がここで花丸さんに、その……き、キスをしたことですわ」
「あっ……」
私の言わんとしていることを理解した様子の花丸さんが、途端に顔を赤くする。
いきなり私にキスをされて、花丸さんも嫌な気持ちになったのだろう。
あの時、花丸さんは私にキスをされて、その直後に逃げるように去って行った。
その時のことを、半年も経ってしまったけど今からきちんと謝ろう。
「あの時は、いきなりキスをしてしまい申し訳ございません。花丸さんも嫌だったでしょう? だから……ごめんなさい」
半年ぶりの謝罪。
とてもじゃないけど花丸さんの顔を直視できなくて、私はずっと頭を下げ続けた。
花丸さんはきっと憤っているだろう。今になって謝られたのだから。
しかし次の瞬間、花丸さんから投げかけられた言葉は意外なものだった。
「嫌じゃ、なかったずら……」
「えっ」
思わず顔を上げる。
花丸さんは顔を真っ赤に染め、恥ずかしげに視線を床に落としていた。
「嫌じゃなかったずら、ダイヤさんとのキス……」
聞き間違いじゃなかったその言葉。
嫌じゃなかった……? 私とのキスが……?
「で、ではなぜあの時、すぐに逃げ出したのですか?」
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