暁 〜小説投稿サイト〜
いろいろ短編集
アナタと寄り添うミライ
[9/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
ってくれたけど、花丸さんとあったことを二人に直接的に話すのは避けたいところだ。
 私が恥ずかしいというのもあるが、なにより花丸さんが誰かに言いふらされるのは嫌がるだろう。
 だけど花丸さんとのことを、どうすればいいのか私にはわからない。正直誰かに相談したい気分だった。

「今から話すのは、私の友人のことですわ。それでも聞いてくださいます?」

 そう問うと、二人は黙って頷いてくれた。
 ありきたりな文言にも何も追及してこない二人に感謝しつつ、私は花丸さんの名前を伏せて、彼女とあった出来事を、そして今の私の気持ちを二人に話した。

 一緒にいると落ち着くこと。
 話していると楽しいこと。
 今は会えなくてモヤモヤすること。
 その人に会いたいということ。

 私はほとんどの出来事を鞠莉さんと果南さんに話した。
 キスのことは私が恥ずかしいのと花丸さんの名誉のため、言わずにいたけれど。
 私のその話を聞いた二人は、揃ってこう言ってのけた。

「それは、恋だね」
「恋……ですか?」
「イエス! 恋よ、ダイヤ!」
「わ、私の友人の話ですわ!」

 鞠莉さんにからかわれるが、今の話は私の友人のことという体裁を貫き通す。

 恋……か。
 鞠莉さんと果南さんは口を揃えてそう言ったけど、それは違うだろう。
 花丸さんは、ルビィの友達だ。
 妹の友達に私が恋をするなんてこと、あるはずがない。

 だから、この感情は恋じゃない。
 相談に乗ってくれた二人には感謝しつつ、このときの私はそう結論づけた。
 だけど彼女の名前を口にすると、心が温もりで包まれるのは事実。
 私は心の二人には聞かれないよう、心の中で彼女の名をポツリと呟いた――。


***


「――花丸さん……」

 スピーカーからその声が反響してきて、しまったと思ったが遅かった。
 卒業式で答辞を読みながら、花丸さんとの思い出を振り返っていたら、ポツリと呟いたものがマイクに拾われてしまった。
 私の答辞が終わり、拍手が鳴り響いていた講堂がシンと静まり返る。
 まずい……やってしまった……。
 慌てて頭が真っ白になった私は、考えるよりも先に口が動いていた。

「は、花丸さん! あとで生徒会室に来るように!」

 そう言って、壇上から降りる。
 講堂にはパチパチと疎らな拍手が鳴り、異様な雰囲気が漂っている。
 恥ずかしさで顔を真っ赤にした私は、急ぎ足で自分の椅子へと戻っていく。

 私が着席してからの卒業式は滞りなく進んだ。
 私の失言があって無事とは言えないけれど、私たちの卒業式は終わりを迎えた。



 卒業式が終わって、私は生徒会室を訪れた。
 生徒会室は現生徒会長も不在で、正真正銘私ひとりだけだ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ