アナタと寄り添うミライ
[8/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
すぐ昼休み終わっちゃう! お姉ちゃんまたね!」
「ええ、また」
ルビィと花丸さんが私を横切って去っていく。
私は振りかえって、小さくなっていく花丸さんの背中を視線で追った。
「花丸さん……」
誰にも聞こえないほどの小さな声で、私はポツリと呟いた。
彼女の名を口にすると、胸がキュッと締めつけられる。
締めつけられた胸は、苦しく、そして痛い。
だけど不思議と、幸福感が混じっているのだった。
それから時間が過ぎゆくのは早かった。
紅葉が色づき、そして枯れ落ち、肌寒い季節がやって来た。
身を震わす寒さのなか、花丸さんのことを考えると心がポカポカ温かくなる。
痛くて苦しい。だけど温かい幸福感がある。
そんな矛盾を孕んだ感情を、私は未だに抱え続けていた。
「はぁ……」
机に頬杖をついて、窓の外を見ながらため息をつく。
以前廊下で花丸さんと出会って以来、彼女の姿を見ていない。
それだけ……たったそれだけで、私の心には大きな穴が空いたような気分だ。
あれから何ヶ月と経っているのに、花丸さんと合えないことが私を悩ませていた。
花丸さんに会いたい、会ってもう一度話をしたい。そう思うのは欲張りだろうか。
ならいっそのこと話はできなくてもいい。ただ同じ空間で、同じ時間を花丸さん過ごしたい。
「はぁ……」
また無意識にため息が出る。
教室の中だというのに、吐く息が少し白くなったような気がした。
花丸さんも今ごろ、教室で寒さに身を震わせているのだろうか。
……だめだ。なにをしても花丸さんのことを考えてしまう。
私はいったいどうなってしまったのだろう。
「はぁ……」
また自然とため息が出る。
ため息をした数だけ幸せが逃げるとはよく言うけれど、本当なのだろうか。
花丸さんのことを考えると幸せで満たされる。だけどその幸せも、ため息の数だけ逃げていってしまうのだろうか。
花丸さんと会えなくて、私はため息の数が増えた。
この胸にある小さな幸せも、ため息をするたびに少しずつ消えて、やがては無くなってしまうのかもしれない。
そう考えると途端に寒気が押し寄せてきて、ぶるっと身を震えた。
ほんの少しの幸せが逃げないように、私は震えた身体を自らの手で抱きしめた。
そうやって悪寒に身を震わせていると、そんな私のもとに近づいてくる人たちがいた。
同じクラスの鞠莉さんと果南さんだ。
「どうしたのダイヤ? 元気ないわね?」
鞠莉さんにそう問われるほど、傍から見た私は元気がないのだろう。
実際のところ自分でも、元気がないのは分かっている。
「何か悩みごと? 相談乗るよ?」
果南さんが相談に乗ると言
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ