アナタと寄り添うミライ
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さん、これは……」
「ああ、それなら右端の棚の三段目にお願いしますわ」
「わかったずら」
わからないところを花丸さんは積極的に聞いてくる。
私たちの間に存在する会話はこのぐらいで、あとはほとんど会話をしない。
その時間が心地良くもあるのだけれど、私はどうにも花丸さんのことが気がかりで仕方がなかった。
「花丸さん」
「はい、なんですか?」
雑務の手を止めて、花丸さんがこちらを向く。
こういったところも私の話を聞く姿勢を示していて、しっかりしている子だ。少しはルビィにも見習ってほしいところである。
「貴女、他に用事などございませんの?」
「用事ずら?」
「ええ。例えば……ルビィと遊んだりとか」
花丸さんと私の妹のルビィは仲が良く、よく一緒に遊んだりしている。
もしかしたら他の用事を蹴って私の手伝いをしてくれているのだと思うと、それは心苦しい。
なにより花丸さんの時間を私の手伝いなどに使わせていいのだろうか。
「ダイヤさん。マル昨日も言ったずら」
「昨日?」
「ずら。マルはダイヤさんのお手伝いがしたいから、こうして今日も生徒会室に来たんです。ルビィちゃんや善子ちゃんと遊ぶ約束があったら、マルもさすがにそっちを優先するずら」
「……そうですか。つかぬことをお聞きしました」
「いえ、分かってくれたなら良かったずら」
どうやら花丸さんに他の予定はなく、花丸さん自らの意思で私の仕事を手伝ってくれているということなのだろう。
最後にニッコリと花丸さんの笑顔。
その屈託のない微笑みは、本当に自身の時間を割いてまで、私の手伝いをしたいという思いが現れているような気がした。
本当に、花丸さんは良い子だ。
一生懸命に仕事をしている花丸さんの姿は、どこか小動物を起想させる。ぴょこぴょこと子犬みたいで微笑ましい。
上の棚にファイルを整理したいのか、ぐーっと背伸びをしている。しかしなかなか手が届かない。
その可愛らしい様子を眺めているのも良かったけれど、花丸さんが苦い表情をして困りだした。
見かねて私は、花丸さんの隣へと近づく。
「届かないずらぁ……」
「任せてください」
「あっ……」
花丸さんの手から書類を整理したファイルを取り上げ、上の棚へと仕舞う。
私の行動が予想外だったのか、花丸さんは驚きのあまり目を丸くさせて私のほうを見つめていた。
下から見上げられるような花丸さんの視線が、私のそれとぶつかる。そこに私は背徳的な行為を感じてしまい、そっと視線を逸らした。
「あっ、ありがとうずら」
「こ、これからは上の棚は私が担当しますわ。花丸さんは下の方をお願いします」
「了解ずら」
花丸さんは背が低い。
ルビィよりも小さいのだ
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