アナタと寄り添うミライ
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桜が咲き誇る、まるで私の門出を祝うかのように。
だけど一方で、ひらひらと舞い落ちる花びらが、必然と別れを連想させる。
彼女とも、今日を境に会えなくなってしまうのだろうか。
可愛くて、真面目で、誰よりも他人を思いやる貴女。
そんな貴女に私が抱いた感情を、結局私は知らないまま今日を迎えた。
これで良かったのかも知れない。
会えなくなって、それで終わり。
春は別れの季節だと言う。私たちが離れるのは、必然だったのかもしれない。
だけどそう考えれば考えるほど、胸がキュッと締め付けられる。
どうしてだろう。自分でもわからない感情。もうわけがわからない。
「続きまして、卒業生答辞。黒澤ダイヤさん」
よくわからない感情に振り回されわけがわからなく夏わていたら、名前を呼ばれて私は少しだけ落ち着いた。
だけど結局私はその感情を理解できないまま、卒業生代表として壇上に立つ。
講堂に集まった数多くの生徒や保護者。皆私たちの卒業式のため、わざわざ足を運んでくれたに違いない。
だけど私の目が真っ先に捉えたのは、妹でも両親でもなく、彼女だった。
栗色の長い髪。色は違うけど私と同じその髪型が、なぜか自分のことのように誇らしかった。
淡いたまご色のカーディガン。彼女は夏以外はずっとそれを身に着けていた。寒がりなのだろうか。
用意していた答辞を読み進めながら、私はひたすら彼女に視線を向けていた。彼女のほうは私の視線に気づいているのだろうか。気づいていたとしたら、恥ずかしいけど嬉しいかもしれない。
今日でお別れなのだから、その姿を目に焼き付けておかなくては。
そんな思いで私は彼女を見つめていたのだと思う。
答辞を読みながら思い出すのは、彼女と過ごした日々。
その数々の思い出は、鮮明に脳裏に焼き付いている。
出会ったのはいつだったか。確か妹が家に遊びに連れて来たのだったか。
最初は、ただ妹の友達というだけの認識だった。
それがいつしか変わって、意識するようになった。
ハッキリと彼女のことを意識するようになった日のことは、今でも鮮明に覚えている。
そう――あれは蝉時雨が降り注ぐ、暑い夏の日。
いつも私ひとりの生徒会室に、彼女が初めてひとり訪れたのだった。
***
なんの前触れもなく、彼女は私のもとを訪れた。
夏休みが終わり、溜まっていた生徒会の仕事を私はひとり冷房の効いた生徒会室で行なっていた。
窓から高く昇った日差しと蝉時雨が入りこんで、冷房をつけている生徒会室は想像以上に暑い。
額ににじむ汗を拭いながら、私はただ黙々と溜まった雑務をこなしていた。
そんなときだった。ふいに生徒会室のドアを開けられ、彼女がやって来たのは。
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