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いろいろ短編集
花咲く果実
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い声色で、高槻君は私を心配そうに見つめる。


「ううん、違うの。穂乃果、嬉しいの。嬉しくて、涙が止まらないの」
「高坂……」


 高槻君に――好きな人に“好き”と言われる事が、こんなにも嬉しいものなんだって、私は知らなかった。


「ねぇ……高坂じゃなくて、穂乃果って呼んで?」


 高槻君に名前で呼ばれると、きっともっと胸が温かくなるだろう。


「…………穂乃果」


 あぁ、やっぱり嬉しい。


「……うん! ありがとう、実弦(みつる)君!」


 だから私も、彼を名前で呼ぶ。


 好きな人を名前で呼ぶのは少しだけ恥ずかしいけど、私まで嬉しい気持ちになる。


「……名前、知ってくれてたんだな」


 驚いたように実弦君は口にする。
 そんなの、覚えているに決まってる。


「もちろん! だって、好きな人の名前だよ。中学三年生の時から、一度も忘れた事なんて無かった」
「……そっか」


 実弦君は優しく微笑んだ。
 その表情は、嬉しさを噛み締めているように映った。


「俺たち、ずっと両想いだったんだな」
「……そうだね。えへへっ」


 何だか、胸の奥がむず痒い。


「私たち、これから恋人同士ってことでいいのかな?」
「あぁ、そうだな……」


 実弦君は確かめるようにそう呟く。




 そして――




「――穂乃果、俺と付き合ってくれ」




 答えはもう、決まっていた。




「うん! よろしくね、実弦君!」




 これで私たちは、晴れて恋人同士となった。
 その事実が、たまらなく嬉しい。


 もっと、もっと。


 もっと、欲しくなる。




「ねぇ……キスしよ?」




 そう言って、私は目を閉じた。


 じわじわと実弦君が近付いてくるのが伝わる。


 温かい両手が、私の両頬に触れた。
 同時に実弦君の手が私の髪に触れて、くすぐったくなる。


 ゆっくりと実弦君の顔が近付いてきて、その息遣いが聞こえてくる。




 そして、唇と唇が触れ――――








「お姉ちゃーん! 漫画の続き貸してー……おおおお姉ちゃん!? 何してるの!?」


 バタンと大きな音を立てて、妹の雪穂(ゆきほ)が部屋に入ってきた。
 実弦君はバッと勢いよく私から距離をとって、恥ずかしそうに立っていた。


「ゆ、雪穂!? こ、これは違うの! いや違わないんだけど……あぁもう、雪穂のバカー!」


 雪穂の邪魔が入らなければ、あのまま実弦君とキスできたのに。
 な
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