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いろいろ短編集
花咲く果実
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思いもよらない言葉を浴びせてくる高槻君に、何だか調子が狂う。


「ふーん……図星だったんだ?」


 冷めた視線で私を見る高槻君。


「とにかく、俺はアイドルには興味ない……いや、アイドルが嫌いだから」


 アイドルが嫌い。
 その言葉がグサリと胸を抉った。


 アイドルが嫌いな高槻君と、アイドルが大好きな私。


 ――やっぱり私と高槻君は、仲良くなれないのかな。


 高槻君は腰を上げ、私の部屋から出て行こうとする。
 このまま高槻君と別れてしまったら、私は彼とずっと仲良くなれないだろう。


 私は、高槻君と仲良くなりたい。


「……そうだね、高槻君の言う通りだと思う」


 自分ではよく分からないけど、きっと高槻君の言った通りなんだと思う。


 ドアノブに手をかけたところで、高槻君は私に背を向けて立ち止まっていた。
 その男の子特有の大きな背中に、更に言葉を投げかけていく。


「穂乃果は、高槻君に可愛いって思ってもらいたいのかも」


 そう、全部高槻君の言った通り。


 中学三年生の頃から持ち続けた願望。


 私は、高槻君と仲良くなりたい。
 高槻君の事を、もっと知りたい。




 私は、高槻のことが――




「今気づいたの。穂乃果は高槻君のこと……ずっと前から好きだったんだって」




 あぁ、やっと言えた。




***




 ――ずっと、その人のことが気になっていた。




 太陽のようにいつも明るくて元気な、中学三年生の時のクラスメイト。


 気が付けば、彼女の事を目で追っていた。
 本を読むフリをして、横目でその人の姿を見追いかけていた。


 いつも一人でいる俺とは違う。
 彼女の周りには自然と人が集まってくる。


 まるで太陽の光を求めるように、誰もが彼女に吸い込まれるように。


 いつも明るく元気で、笑顔が可愛い人だった。


 きっとこの感情は、恋なのだろう。
 俺はその人に、恋をした。


 何度も彼女に話しかけようとした。
 一歩でもいい、彼女に近づきたかった。


 でも、俺にそんな勇気は無かった。


 いつも一人でいる俺と、いつも周りに人がいる彼女。




 ――きっと俺は彼女と、仲良くなれないのだろう。




 結局俺は、一度も彼女に話しかけられないまま、中学を卒業した。




 そして、高校二年生のある日。


 とある動画サイトで、偶然その人と再会した。
 動画の中の彼女は可愛い衣装を着て、歌って踊っていた。


 
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