花咲く果実
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ただの店員と客のやり取り。
けど、その声を聞いて、私は彼が誰だったか完全に思い出した。
「あれ? 高坂……だよな?」
先に彼が私を見て、思い出したように口にする。
「高槻君……だよね? 中3の時、クラスメイトだった」
私も彼の顔を見てハッキリとそう言う。
この時の私は、彼が高槻君だとほぼ確信していた。
「ああ、やっぱり高坂か。俺の事なんてよく覚えてたな」
「だって高槻君、目立ってたから」
「目立ってたか? 割と大人しくしてたと思うんだけど」
「いやぁ、大人しすぎて逆に目立ってたっていうか……よく分かんないけど、そんな感じ」
「ああ、そういう事か。納得」
そう言って高槻君は笑った。
彼の笑うところを始めて見て、私は少し得したような気分になる。
高槻実弦、それが彼の名前。
中学三年生の一年間だけ、私たちはクラスメイトだった。
その時、私は高槻君と会話した事なんて無かったから、今こうして自然と会話しているのが不思議だ。
「そういえば、高坂ってここで働いてるんだな。バイト?」
「ううん。ここ、穂乃果の家なんだ」
「へぇー、ここ高坂ん家だったんだ」
「うん! だから穂乃果、手伝わされてるの!」
「手伝わされてるって、嫌々やってるのかよ……」
そう言って高槻君がまた笑った。それに釣られて私も笑ってしまう。
高槻君との会話は、新鮮で楽しい。μ’sのみんなとの会話とはまた違った面白さがある。
こんなに楽しいと知っていたら、中学の時に話しかければ良かった。
ふと、そんな後悔の念が押し寄せる。
「そうだ、高坂ってどこ通ってるんだ?」
高槻君が私に尋ねる。
何だか、彼が私の事を知ろうとしてくれているみたいで嬉しい。
「音ノ木坂だよ! ことりちゃんと海未ちゃんも一緒なんだ!」
「ことり、海未……あぁ、いつも一緒にいたあの二人か」
「うん! それでね! 穂乃果、ことりちゃんと海未ちゃんと、音ノ木坂で出来た友達と一緒に、スクールアイドルやってるんだ!」
久しぶりに高槻君に会えたからか、私は舞い上がってついついそんな事まで言ってしまう。
高槻君に、もっと私の事を知ってほしい。そんな欲求が不思議と湧いてくる。
「アイドル……」
すると高槻君は表情を曇らせ、思いつめたようにそう呟いた。
けど、私はもっと自分の事を知ってほしくて更に話を続けた。
「そう、μ’sっていうグループなんだ! 高槻君知ってる?」
「いや、知らない」
さっきまでとは違い、どこか冷めた口調で答える高槻君
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