久遠の記憶、憧憬の景色。
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私には、自信がないから。
一つ上には、ドラを独占する子がいる。
同学年には綺麗なデジタル打ちをする子と、猪突猛進といった力強い麻雀をする子がいる。
そんな人たちと比べて、私には何があるのだろうか。
わからない。
でも、久と麻雀を打つと、何か掴めるような気がする。
「ねぇ久、今から雀荘行かない? 私、久と麻雀したい」
「えぇー、今から?」
「お願い! この通り!」
手を合わせ、頭を下げて久にお願いする。
「はぁ。いいわよ、一緒に打ってあげる」
「本当!? ありがとう、久!」
「いいのよ。……っとごめん憧ちゃん、ちょっと電話出るね」
久のケータイが鳴って、久が電話にでる。
電話で話している久の表情はとても嬉しそうで、声も弾んでいた。
お父さんとお母さんという言葉が聞こえてきたから、きっと電話の相手は家族なんだろう。
電話が終わり、久がケータイを閉じた。
そして私を見て、久は申し訳なさそうな顔をした。
「ごめん、憧ちゃん! お父さんとお母さんが仲直りして、今から三人で観光しないかって。私今すぐ戻らないと!」
久が頭を下げて、私に謝ってくる。
仲直りって、久の両親は喧嘩でもしていたのだろうか。
今朝、久から聞いたのは、疲れているってことだったのだけれど。
何にせよ、久が家族との時間を大切にしたいってことは、十二分に伝わってきた。
「いいよ。じゃあ松実館に戻ろっか」
「本当にごめんなさい。またいつか、麻雀打ちましょう」
「わかった、約束だよ」
「うん、約束」
久が右手の小指を立てて、私に近づける。
それを見て私も、同じように右手の小指を立てて、久の小指に絡ませた。
『指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます! 指切った!』
約束を交わす。
自信をもって自分を強いと言う久。
そんな彼女に並べるように、隣に立てるように、これから麻雀もオシャレも頑張っていく。
昼食を食べ終え、店を出る。
会計は、前言通り久が払ってくれた。
今日は、何から何まで久にもらってばかりだった。
お金がなかったので仕方ないけど、この恩はいつか何かの形で返さないといけない。
「憧ちゃん、ケータイもってる?」
「もってるけど、学校にもっていくのはダメだから、家に置いてる」
「そう。じゃあ、これあげるわ」
久から一枚の紙切れを受け取る。
そこには、アルファベットと数字が羅列して書かれてあった。
「私のメールアドレス。よかったら、いつでもメールしてきなさい」
「うん……!
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