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いろいろ短編集
久遠の記憶、憧憬の景色。
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、憧ちゃんは素直でいい子ね」


 フワッと、温もりに包まれた。
 気がつくと久が、私の頭を撫でていた。


「な、撫でるなー! セクハラで訴えるぞ!」
「おぉ、怖い怖い」


 おどけるように怖がりながらも、久は私の頭を撫で続けた。


「うぅ……ふきゅ」


 やばい、変な声もれた。


 嫌だといいつつも、それほど嫌なわけではなかった。
 久の手は温かくて、撫でられていて心地良かった。


 やがて、久の手が頭から離れる。


「あっ……」
「なに? もっと撫でてほしかった?」
「べっ別に! そんなわけないし!」
「そう。じゃあ会計に行きましょう。約束通り、その服買ってあげるから」


 本当はもう少し撫でてほしかったけど、恥ずかしくてつい嘘を言ってしまった。


 それから試着室を出て、私は久に服を買ってもらった。




***




 気づけば昼過ぎとなり、私は久と昼食をとることになった。


 先ほど久に買ってもらった服に着替え、気分はとてもいい。


 久は私に貸していたパーカーを着て、さっきまでのTシャツ姿ではなくなった。
 もう少しさっきまでの久を見ていたかったけど、本人が恥ずかしがっていたので仕方ない。


 今はショッピングモール内のファミレスに入り、二人で昼食をとっている。


 ここでも私は、久にお金を出してもらうことになった。


 昼食を食べるお金ぐらいは持っているのだが、久は自分が払うと言って聞かなかった。


 私は素直に久の厚意に甘えることにした。


 メニューは、久と同じものを頼む。


 久は好きなものを食べていいのよ、なんて言ってきたけど、久と同じものが、今私が一番食べたいものだった。


「憧ちゃんって、部活とかしてるの?」


 パスタをフォークで巻きながら、久が尋ねてきた。


「麻雀部に入ってるよ」
「麻雀か。それじゃあ私と一緒ね」


 久がニッコリと笑う。
 私は、久と一緒という事実が、何だか嬉しかった。


 フォークに巻いたパスタを、久が口に運ぶ。


「久も麻雀部なんだ。強いの?」
「んー……強いんじゃない?」
「へぇー、どれくらい?」
「どれくらいって言われても……そんなのわからないわよ」


 パスタを咀嚼しながら、久は困ったようにそう答えた。


「プロより強い?」
「さすがにそこまで強くないわ。同学年の人と比べたら、そこそこ強いんじゃない?」
「ほぇー」


 そう語る久の表情は、自信に満ち溢れていた。


 その自信がどこから来ているのか、私は知りたいと思った。



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