久遠の記憶、憧憬の景色。
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少し派手めな黒のTシャツだった。
シンプルなものが好きな私だと、まず選ばないようなものだった。
「わかった、それにする」
決断は早かった。
これを着れば、少しだけ久に近づけるような気がしたから。
「あとは……その上にこのピンクのカーディガンなんてどうかしら? これから寒くなってくるから、制服の上からでも着られるわよ?」
制服の上からでも着られる。
久の小さな気遣いが、私は嬉しかった。
「うん、じゃあそれも買う」
「お金を出すのは私だけどね」
ガックリと肩を落とす久だが、心底嫌がってるというわけではないと思う。
ていうか、こんなに良くしてもらって、申し訳なくなってくる。
「あとは、それに合うようにスカートを選んで……これなんか良いんじゃない?」
「うん、それでいい」
今のところ全てに頷いているけど、私はその全てが気に入っていた。
「……本当にこれでいいの?」
「うん、久が選んでくれたのなら、何でもいいよ」
「何でもって……人の意見にハイハイ頷くだけじゃダメよ? 少しは自分の意見も持たないと」
あまりにも素直すぎたのか、久が呆れた様子で私を見つめた。
「大丈夫。私、割と言いたいことはハッキリ言う方だから。久の選んでくれたものなら受け入れる、それが今の私の意見なの」
まっすぐに久を見つめ、私はそう言った。
それが今の私の、嘘偽りない本心だから。
「そう。じゃあ、試着してきなさい」
「はーい」
久から服を受け取り、私は試着室へと入っていった。
制服を脱ぎ、久に選んでもらった服に着替える。
鏡を見て、変わった自分の姿を確認する。
服はオシャレなんだけど、今の私には不釣り合いなように感じた。
私自身が幼すぎて、服に負けているような気がする。
カーテンを開け、久にも見てもらう。
「……どう?」
「うーん、やっぱり憧ちゃんにはまだ早すぎたかな。服に着られてる感じがするわね」
やっぱり、久も同じような意見だった。
「髪型かな……今の髪型だと、少し子供っぽいのよね」
「ううっ……知ってるわよ」
やはり今の短い髪は、子供っぽいのか。
「憧ちゃんの場合、髪を伸ばしたほうが似合うと思うわ。顔は可愛いほうなんだし、伸ばせばきっと似合うわね」
「わかった、髪伸ばす」
久も髪が長いし、髪は女の命とも言う。
私はこの時、髪を伸ばす決心をした。
「体型は、これから段々変わっていくから心配しなくても大丈夫よ。数年後にはきっとスタイルもよくなるわ」
「うん、頑張る」
「うんうん
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