久遠の記憶、憧憬の景色。
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うって決めたからいいじゃん! 久には関係ないでしょ!」
久には関係ない。
そう言われて、胸がチクリと痛む。
昨日、両親にも言われた言葉。
そう言われてしまっては、私には何も反論することができない。
「……ふん、好きにすればいいじゃない」
「やったー! ねぇねぇ、どこ行くの!?」
「別に、どこでもいいわよ」
半ば諦めたような私とは対照的に、あからさまに喜びを見せる憧ちゃん。
学校をサボることが、そんなに嬉しいのか。
そういえば、憧ちゃんは制服だった。
さすがに、この姿のままで一緒に行動するのはマズい。
「まずは、その服をなんとかしないとね」
「服? あっ、制服のままだとマズいもんね」
憧ちゃんはすぐに私の意図に気づく。
瞬時に理解できるなんて、本当に頭が良い子なんだろう。
「そうね。だからまずは、憧ちゃんの服を買いに行きましょう」
「えっ、いいよそんな。家に帰って着替えてくるから」
「今から帰って、両親になんて説明するの? 学校サボって遊んできます?」
「うっ、たしかに……」
私の指摘に、憧ちゃんはガックリと肩を落とした。
頭が良いのか悪いのか、よくわからない。
「でしょ? だから服を買いに行くの」
「でも私、そんなにお金もってない……」
「いいわよ、久おねーさんが買ってあげる」
「本当!? ありがとう、久!」
あえて自分のことを久おねーさんなんて言ってみたのに、目の前の少女はそう呼んではくれなかった。
しかも、私が買ってあげると言うやいやな、すぐさま食いついてきた。
まったく、現金な少女だ。
自分から言いだした手前、買ってあげるつもりだけど。
サイフの中にはそれなりに入っているし、大丈夫だろう。
「ほら久、早く行こうよ!」
よっぽど楽しみなのか、憧ちゃんが先に歩いていく。
洋服店の場所は知らないし、先導してくれるのはありがたいのだけれど。
「あぁもう、待ちなさい!」
私を置いていくのは勘弁してほしい。
でないと、昨日みたいにまた迷子になってしまう。
「久おそーい! 早く早く!」
先を行く憧ちゃんを見失わないよう、私は必死に歩いて追いかけるのであった。
***
昨日、公園で道を訪ねてきた、二つ年上のおねーさん――上埜久。
今朝、通学途中でまたしても出会い、私は学校をサボって久の観光に付き合うことを決めた。
久の印象を一言で言うと、カッコいいだった。
おさげのように両肩あたりで結ばれた、長い赤色の髪の毛。
私より頭ひと
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