久遠の記憶、憧憬の景色。
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自分でも、何を言っているのかわからなくなる。
なにが違うというのだ、なにが。
「警察呼ぶわよ?」
「違うから! 私、今道に迷っているだけなの! だから道を教えてほしくて!」
「それなら尚更、警察呼んだ方がよくない?」
「それは確かに……ってダメよ! 不審者だと思われちゃうじゃない!」
「不審者って自覚はあるんだね」
少女はケラケラと無邪気に笑う。
笑われるのは癪だけど、警戒心は和らいだようで安心する。
「えっと、私、本当に道に迷ってるんだけど……」
「その歳で迷子? おねーさん高校生だよね?」
「うるさいわねガキンチョ」
バカにされ、ついつい頭に血がのぼってしまう。
ガキンチョ呼ばわりが気に障ったのか、少女の方も反抗してきた。
「ガキンチョじゃない、中学生になったもん!」
「なったってことは、中学一年生?」
「な、なんで分かったの!?」
「バレバレよ。ちなみに私は中学三年生、まだ高校生じゃないわよ」
会話の流れで、少女の学年を知ってしまう。
だから私も、少女に自分の学年を打ち明けた。
私の学年を聞いた少女は、目を大きくして驚いていた。
「へぇー、中三なんだ。なんだか大人っぽいね、おねーさん」
「そうよ。だから、目上の人には敬語で話さないとダメよ」
「えぇー敬語めんどくさい」
敬語を使わない少女にそう注意するが、少女は不満気な表情だった。
「ダメよ、大人になったときに困るから」
「説教臭い……そんなこと言うおねーさんには道教えてあげないからね!」
「ごめんなさい私が悪かったです! お願いだから道を教えて!」
道を教えてくれないと、本当に困る。
こればかりは仕方ない。
不本意ではあるが、年下相手に下に出る。
「どうしよっかなー? おねーさんがどうしてもって言うなら、教えてあげよっかなー?」
「お願いします! この通り!」
口調から、からかっているのは承知なんだけど、それでも道を教えてもらうしかなかった。
私は少女に頭を下げてお願いする。
年下に頭を下げるなんて、普段の私ならありえない。
「じょ、冗談だって! 顔上げてよおねーさん!」
やはり冗談だった。
このガキ……後でとっちめてやる。
「それで、どこに行きたいの?」
「えぇっと、ミカンだったかな? そんな感じの旅館」
少女の問いに答えると、少女はこれ以上ないほど呆れたような表情で私を見つめた。
仕方ないじゃないか、旅館の名前なんて覚えていない。
何か閃いたように、少女が顔をハッとさせた。
「ミカンって……あっ、もしかし
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