久遠の記憶、憧憬の景色。
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の記憶は、三年経った今でも色褪せずに強く、私のなかに残っている。
憧ちゃんも同じだったのだと考えると、嬉しさがこみ上げてくる。
「ねぇ、あの時くれたメアド、間違ってたんだけど」
「嘘っ!? ごめんね! あぁ、それでいつまで経っても憧ちゃんからメール来なかったんだ」
「本当、しっかりしてよね」
「うん、ごめんね」
出会った時の別れ際、私は憧ちゃんにメールアドレスを渡した。
それからいつまで経っても憧ちゃんからメールが来なくて、私のことなんて忘れたのだと思っていたけど、まさかメールアドレスが間違っていたなんて。
「許さないわよ、久。罰として――」
憧ちゃんはニヤリと口元を緩めて、少し顔を赤くして、言葉を続けた。
「あの時みたいに、頭撫でて……」
そう言ったときには、憧ちゃんの顔はトマトのように真っ赤だった。
「ごめん、やっぱ今のなし――ふきゅ」
なかったことにしようとする憧ちゃんの、頭を撫でる。
あの時撫でたときと同じように、憧ちゃんから変な声がもれて懐かしくなる。
「ねぇ、私、可愛くなった?」
「うん、見違えるほど可愛くなったわ」
「このカーディガン、覚えてる?」
「もちろん覚えてるわよ、私が買ってあげたものよね」
甘えてくるように質問を重ねる憧ちゃん。
外見は見違えるほど可愛くなったけど、中身はあの時から変わっていない。
「あの時の約束、果たせてよかったわ」
最後に交わした、憧ちゃんと一緒に麻雀する約束。
あの時は両親との時間を優先してしまったが、こうして三年越しに果たすことができた。
「そうだね。私、強くなったから」
「知ってるわよ。憧ちゃんの試合、ずっと見てたから」
「……ありがとう」
憧ちゃんがインターハイに出場してると知ったのは、阿知賀が注目された準決勝のときだった。
それから憧ちゃんの前の試合を何度も見返したけど、かなりの実力をつけていた。
きっと、相当な努力をしてきたのだろう。
ギィっと扉が開く重たい音がして、他の対戦相手二人が入ってきた。
「さて、そろそろ始まるわね。負けないわよ、憧ちゃん!」
「私も、久には負けないから!」
私と憧ちゃん、やって来た他の二人も卓につく。
『インターハイ決勝、中堅前半戦! スタートです!』
約束の時間が、始まった。
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