久遠の記憶、憧憬の景色。
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て両親は喧嘩ばかりするのだろう。
気がつけば、あのどうしようもない両親のことを考えていた。
あぁもう……嫌になる。
考えるのをやめる。
私はゆっくりと目を閉じ、意識を落とした。
目を開けると、綺麗なオレンジ色が視界に飛び込んできた。
いつの間にか寝ていたらしい。気がつけば夕方になっていた。
立ち上がり、服についた芝を手で払う。
グーっと背伸びをして、身体を覚醒させる。
そろそろ、両親のところに帰らないと。
喧嘩していた両親だけど、きっと今ごろ、いなくなった私を心配しているだろう。
そう思い、旅館に帰ろうと一歩踏み出した。
しかし、二歩目が踏み出せなかった。
「……ここどこ?」
帰り道が、わからなくなっていた。
何も考えずにここまでやって来たため、どっちに向かって歩けば帰れるのか、全くわからない。
とりあえず周囲を見渡す。
人っ子ひとりいない公園。当然だ、一人になりたくてここに来たのだから。
「そうだ、ケータイ!」
ゴソゴソとポケットを漁るが、何の感触もなかった。
サイフもケータイも持っていない。旅館に置いてきてしまった。
「やばい、どうしよう……」
途方に暮れ、上を向く。
空はオレンジ色に染まっていた。
コツ、コツ。
どこからか微かに、足音が聞こえた。
耳を澄ませて、音に集中する。
足音は、だんだんと大きくなってくる。
やがて、その人物の姿を視界に捉えることができた。
赤色の襟の、セーラー服。
自分と同じ、女子中学生だろうか。
公園の外にある歩道を歩く少女に、私は道を訪ねようと近づいて声をかけた。
「あのー」
少女が振り向く。
まだあどけない表情の少女だった。
ツーサイドアップのように二箇所で結んでいる、クリーム色の短髪。
活発そうで、どこか生意気そうな顔。
セーラー服を着ているが、どちらかと言うとセーラー服に着られている感じのする、まだ幼い少女だった。
「……なんですか?」
少女の声からは、警戒心が見てとれる。
それもそうだ。見知らぬ人にいきなり声をかけられたら、誰だって警戒する。
「あ、えっと、怪しい者じゃないわよ?」
「……」
少女は警戒心がいっそう強めたように、ジト目で私を見てくる。
その視線で、私はさっきの発言が完全に失策だったことに気づいた。
自分から怪しくないと言うなんて、どう考えても怪しいじゃないか。
「えっと、その、違うの」
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