松実姉妹と過ごす平凡な一日
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湯槽に浸かる。
「はぁ〜」
「お兄ちゃん、あったかい?」
「うんうん、あったかいなぁ〜」
「ふふっ、私もあったかいよ〜」
本当、あったかい。あったかいぐらいしか考えられない位、あったかい。
緊張して、もはや思考が停止していた。
「いい湯だね〜」
「そうだな〜」
「あったか〜い」
意味をなさない会話の応酬。
湯槽に浸かりながら、幸せそうに顔を綻ばせる宥と玄を見ると、こっちまで幸せな気分になっていく。
ああ、いい湯だなぁ。
* * *
風呂から上がって時間も経つと、いよいよ就寝時間がやってきた。
旅館の朝は早い。
次の日に仕事があると昼までぐうたらと寝ているなんて出来ないので、前日はこうして早く寝なければならない。
ベッドに入ってそろそろ寝ようとしたその時。
――コン、コン。
扉を叩く音がした。
一体誰だ、こんな夜中に……。
「……はい」
扉を開ける。
そこにいたのは――
「……どうしたんだ、宥」
松実宥。
寝巻き姿の彼女は、ギュッと大切そうに枕を腕に抱え、その身を震わせていた。
「お兄ちゃん、あのね。寒くて眠れないから、その……一緒に寝てもいい?」
震えた声で、宥は上目遣いで見つめてくる。
暗くて表情がよく読み取れないが、その口調から本当に寒くて眠れないという事は十分に伝わった。
「あ、ああ。いいぞ」
「お兄ちゃん……ありがと」
部屋に宥を招き入れる。
宥は俺の服の裾をキュッと掴んで、俺のすぐ後ろをピッタリと歩いてくる。
あれ? これってよく考えたら、夜中に女の子を部屋に連れ込んでる状況だよな。
やばい、そう考えると途端に緊張してきた。心臓の鼓動が早くなる。
でも、寒がっている宥をこのまま返すわけにはいかない。一緒に寝てもいいと言ったからには、一緒に寝るしかないのだ。
「……じゃあ、寝ようか」
なるべく平静を装うように、声を抑えて言う。
「う、うん」
宥も少し緊張しているのか、それともやっぱり寒いのか、声が震えていた。
ベッドに視線を向ける。
すると、明らかな違和感があった。
布団がこんもりと盛り上がっていて、もぞもぞと動いている。
「お、お兄ちゃん。布団が動いてる……」
宥の口調は緊張や寒さとは違う、明らかな恐怖で震えていた。
「ま、任せろ。宥は離れていてくれ」
「う、うん」
宥がベッドから離れたのを確認して、俺は慎重な足取りでベッドに近づいていく。
そして、布団に手をかけて――
一気に捲った。
「ひゃっ」
宥の
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