松実姉妹と過ごす平凡な一日
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ても癒される。
そろそろ体を洗おうと、浴槽から出る。
――ガラガラ。
浴場入口の戸が引かれた。
「お姉ちゃーん、早く早く!」
「ま、待ってよ玄ちゃーん」
聞こえるのは玄と宥の声。
なんだ、二人も風呂に入りに来たのか……
――玄と宥!?
「きゃぁぁっ!! な、なんでお兄ちゃんが女湯にいるのです!?」
「お、お兄ちゃん……女湯に入る趣味があったの?」
姿を隠す暇もなく、体を洗っているところを玄と宥にあえなく見つかった。
幸いなことに、二人とも体にタオルを巻いていて、大事なところは見えないようになっている。
「二人こそなんで入ってくるんだよ! ここ男湯だろ!?」
そう。ここは男湯のはずだ。
入る時にきちんと確認した。
「えぇっ!? 私達が入る時は女湯だったよ!」
なんだよ、この良くあるテンプレ展開は。
「すまん。すぐ出るわ」
タオルで大事なところを隠して、風呂から出るため立ち上がろうとする。
――ガシッ。
肩を押さえつけられて、立てなかった。
見ると、玄と宥がそれぞれ両手で俺の肩を押さえつけていた。
「……あの、そう押さえられると出れないんだけど……」
頼むから、手を離してほしい。
「せっかくだから、お兄ちゃんと一緒にお風呂入りたいなぁ……なんて」
「お兄ちゃん、一緒にあったかくなろ?」
縋るような視線を向けられる。
くっ……そんな目をされたら断れないじゃないか。
「……わかったよ。先に体洗うから、それまで待っててくれ」
はーいと言って玄と宥は湯槽に浸かりに行った。
二人の楽しげな会話を聞きながら、俺は入念に体を洗っていく。これから玄と宥の二人と入浴すると思うと、いつもより丁寧に洗わざるを得なかった。
体を洗い終えて腰にタオルを巻き、二人の待つ湯槽に向かう。
「お待たせ」
「お兄ちゃーん、早く入ろっ!」
玄が急かす。
「あったかいよ〜」
宥はそう言いながら、玄の隣から少し横にずれた。
玄と宥、二人の間にスペースが空く。ちょうど、人が一人すっぽり入りそうな空間。
まさかとは思うが――
「お兄ちゃん、ほら。玄ちゃんと私の間、空いてるよ?」
やっぱりかぁぁぁぁ!!
「お兄ちゃん、早くするのです!」
声を大きくする玄。
いや、さすがに二人の間に入るのは無理があるんじゃないか。
迷っている間にも、宥と玄はジーッと俺を見つめてくる。
だから、その目は反則だって……。
もう、覚悟を決めるしかなかった。
「それじゃあ……お邪魔します」
――ちゃぷん。
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