松実姉妹と過ごす平凡な一日
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俺は顔を持っていってそのまま口に咥えた。
その際に、玄の指先まで一緒に口に入ってしまった。
「きゃっ。もぅお兄ちゃん、玄の指を食べるのはダメなのです!」
「悪い悪い。でも美味しかったぞ」
「うぅ〜、お兄ちゃんのばかっ」
顔を赤くして玄はそっぽ向いてしまう。
「玄ちゃーん、私もみかん食べたいな〜」
「お姉ちゃんっ! じゃあ私が食べさせてあげる!」
おっとりとした口調で宥がそう言うと、玄はパアッと元気を取り戻して、みかんを一つ手に持つ。
「お姉ちゃん、あーん」
「あーんっ」
妹から差し出されたみかんを咥える姉。
玄と宥は本当に仲の良い姉妹で、こういう光景は見ていて微笑ましい。
幸せそうにみかんを食べる宥を見ていると、俺の視線に気付いたのか、宥がきょとんと目を丸くして不思議そうに俺を見た。
「お兄ちゃん、まだみかん食べる?」
「食べる」
今度は宥がみかんを一つ手にとって、
「はい、あーん」
「あーん」
ぱくっ。
玄の時と同じように、差し出されたみかんと一緒に指も咥えてしまう。
「きゃっ。もぅ……めっ」
顔を赤くさせながら、宥はいたずらっ子を叱るようにそう言った。
その姿が可愛らしくて、自然と頬が緩んでしまう。
「あー! お兄ちゃん、お姉ちゃんにみかん食べさせてもらってえっちな顔してるー!」
「玄、これは違うんだ。みかんが美味しくてだな」
そう弁明するが玄はキャーキャーと騒ぎ立てる。そんな中、宥はずっと顔を真っ赤にして俯いていた。
こたつがちょっと暑いのかな?
数分かけて玄を落ち着かせると、再びまったりとした時間がやって来た。
「暇だな〜」
「そうだね〜」
「こたつあったかいね〜」
こたつに入りながら、テレビのお笑い番組をだらだらと見る。そんな風に時間を持て余すことに、平和を感じずにはいられない。
これから先もずっと、こんな時間が続けばいいのに。
「麻雀する〜?」
お笑い番組に飽きたのか、玄が唐突に尋ねた。
「えー、三人しかいないじゃん。別にこのままだらだら過ごすのも悪くないし」
「それもそうだね〜」
そう言って、玄は再びテレビに視線を向けた。
夕飯に呼ばれるまで、俺と松実姉妹はずっとこたつでまったり過ごしていた。
* * *
「はぁ〜、いい湯だな〜」
夕飯を済ませると、俺は松実館の大浴場にやって来た。
泊まり客の入浴時間はとっくのとうに終わっていて、住み込みで働いている俺はこうして浴場の営業時間外に入浴させてもらっている。
若干熱めの湯が疲れた体に染み渡る。
働いた後の風呂には、何度入っ
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